ムーミンの作品に触れるなら、コケムス2階の観覧に時間を割きたい。常設展「ムーミン谷のギャラリー」では小説と絵本・漫画をひもといており、フロアの入り口には現物の書籍が並び、随所に絵本や挿絵からの象徴的シーンが掲げられている。額装されているもの、オブジェにされているもの、回転させて読めるコミックなど、親しみやすい見せ方で楽しめる。コミックの一コマだけを集めたコーナー、ムーミン谷の仲間を一堂に介した展示もあり、本の世界観がじっくり理解できる。

作品にはシーンに対するメッセージも配され、場面場面への作者のさまざまな思いも伝わってくる。「愛、寛容、家族、友情で困難を乗り越え喜びを分かち合う」「孤独とは、一人ぼっちの意味を知ること」「自由・自立とは、他人から理解されて自分が何者か気づくこと」など、生きる上で出くわし考えてしまいがちなことを、導いてくれているかのようだ。「自由と孤独を愛する」との添書きのある、荷を背負ったスナフキンの哀愁あふれる後ろ姿の絵には、つい足を止めて見入ってしまう。

ほか隣接する企画展「ムーミンとトーベ・ヤンソン」では、原作者であるヤンソンの生涯と作品との関わりを、資料を交えて展示。「トーベの記憶シアター」では、作品に対するヤンソンの思いを、映像と交えて紹介している。いずれも、作品の根底から感じ理解するには、じっくりと見ていきたいものばかりである。最後は1階にある世界最大級のグッズショップを眺め、ムーミン谷の食堂にも寄っていきましょうか。