
酒蔵巡りの2軒目は、当地の地酒「秩父錦」蔵元・矢尾本店の「秩父錦酒づくりの森」を訪れた。1階と地下は秩父錦醸造蔵、2階は酒造資料館、隣接して物産売店が設けられた施設で、もとは秩父市街に構えていたのをこの長尾根丘陵に平成6年に移転オープンした。蔵の創業は1749年と古く、初代は滋賀県出身のため近江商人に所以がある。升屋利兵衛との屋号を掲げるが、「升屋」は同名が多いため升の字の右脇に点を打っているのが面白い。
資料館にはその点つき升の字の屋号が入った徳利ほか、かつての酒造道具が並んでいた。仕込、簀立て、麹作りは人形を用いて説明、ほか仕込みの三尺樽、酒を搾る舟など、なかなか大きな道具も見られる。桶などには杉材を使っているそうで、高価だが殺菌性膨張性が強く水漏れに強いとか。ほか、酒蔵は地域貢献を大切にしており橋を架けたりして表彰された記録が残る、酒造りの歌は作業ごとに違うので聞こえる歌で進捗がわかる、など案内の方に当時の逸話も多数伺えた。
1階の蒸し米と麹の仕込み場、地下の貯蔵タンクを眺めたら、隣接の売店の試飲コーナーへ。きりっと尖った刺激が強い「極辛」、ほどけるようなまろやかさの「枡屋利兵衛(吟醸)」の、対照的な2銘柄を味わったところで、今宵の宿へと向かいましょう。