国道23号線を越えたところの「大門」は、伊勢街道が横切る交通の拠点、かつ日本三大観音の一つに挙げられる津観音の門前町として賑わったエリアである。まずは津観音こと、恵日山観音寺へ。和銅2(709)年創建の古刹で、本尊には近隣の海から揚がったという聖観世音菩薩が祀られている。本堂に参り、観音様と対峙して参拝。堂内には読経の放送が響き流れ、いかにもご利益ありげだ。

この寺には本尊のほか、伊勢神宮の祭神である天照大神の本地仏「国府阿弥陀如来」も祀られており、すぐそばに伊勢街道が通っていることから、ともに参拝する習慣もあったという。なかなか由縁ありげな観音様だが、境内は人気がなく本堂の朱塗りがあせ加減と、ちょっと活気がない。三大観音のうち浅草、名古屋大須の2つに比べると、静かに参拝できる観音寺である。

せっかく来たので弘法大師像も拝み、体の不調を治す「撫で石」を痛みがとれない肩に合わせ、鳩を追っかけ回す子供たちを見ながら夕陽を眺め、とぼんやり過ごした。隅には映画監督・小津安二郎の記念碑もあり、津の宿場に関わりがある作品らしい一節が刻まれていた。『「行ってまいります」おばあさんは笑いながら「またおいなされ」僕はなんだか悲しくなった』とのやりとりを目で追うと、読んでいるこちらもしんみりしてくるような。

まだ日があるので、門前も軽く歩いてみましょう。