とある究極のグルメ漫画で、餃子は完全食と綴られていたのを読んだことがある。皮は炭水化物、あんにはひき肉のタンパク質やビタミン類、キャベツやネギなどの野菜類が入っているから、主食の要素もおかずの要素も含まれるといえる。餃子の消費量を競うトップ2の都市でも、素材である肉と野菜が地産なことに加え、栄養補給上の必然性も由緒書きに記されていた。餃子といえばスタミナとパワーの源として取り上げられがちだが、体にいい健康食としての評価も見逃せないようだ。

トップ2の都市の知名度が高いせいもあるが、津も日本有数の餃子処なのは意外に知られていない。その名も「津ぎょうざ」の歴史は比較的浅く、1985年に学校給食の献立が栄養士により検討されたことに端を発する。肉と野菜がバランスよく摂取でき、育ち盛りの子供でも満足できる味と量を考慮した結果、餃子を給食に導入することを決定。以来、餃子は津の市民にとって、成長期を支えてくれたソウルフードとして浸透していった。市街の食事処でも供するところが多く、学生や労働者にとっても根強い人気があるという。

その訳は、津新町駅に近い台湾料理「氷花餃子」でいただいてみて実感した。午後遅めの時間にもかかわらず、店内はスーツや作業着姿の男性でさらりと埋まっており、店の人によるとお客は津餃子を頼む人が多いとのことだった。こちらも日替わりランチに合わせて、単品で津ぎょうざもオーダー。取り扱いは1個単位となっており、2個頼んでみたら皿を見て驚いた。ひとつの大きさが握り拳大ほどはあり、ふたつ並んだ皿には隙間がない状態だ。

普通サイズの3つ分はある大きさが津ぎょうざのウリで、栄養と満腹感それぞれを満たす工夫の賜物である。揚げ餃子なのもほかの餃子処の都市とはスタイルが異なり、ガリガリになるほどしっかり揚げてあるのを、バリっとひとかじり。中は白菜とニラとひき肉のあんが詰まっており、かめば熱々の汁が肉の間から染み出して拡散。ひと口でうまさも3つ分のパワフルさが嬉しい。そのままでも肉汁がうまいが、2つ目はタレをつけていただくと皮の旨さも楽しめる。

バリバリ、ジュッと食べ進めば、このサイズだけに一つでも結構お腹にたまる。これ3つとビールだけでも充分そうで、「大人の完全食」としても魅力がある。地元の方が小学校の学校給食に出た餃子をアテに一献、と思えば、当地のソウルフードの深さに恐れ入らずにいられない、津のローカルごはんである。