
万座鹿沢口の嬬恋集落の入口、万座ハイウェイの登り口に、麓の料亭といった感じの店構えを見せる。奥行きもあり、座敷にはなぜか横綱三重の海の綱など、調度だか骨董だか分からない品々が。田舎の豪邸に招かれたみたいで、落ち着くような落ち着かないような佇まいである。
高冷な嬬恋はそばの産地だったが、いまはほとんどとれずこちらのも北海道産の新そはで打っている。挽きぐるみの田舎そばなので香り高く、身がほくほく厚いやまと豚入りの熱々なつけ汁にも負けていない。付け合わせの浅漬けのキャベツはもちろん地場産、ザクザクと瑞々しく高原野菜のうまさだ。
店名にある中居屋重兵衛は、横浜で貿易商を営んだ地元の名士で、開国にも一役かったという。資料コーナーを見ていると、高原の街から横浜界隈に、ひととき飛び戻ってきたような。