
晴天で紅葉日和の今日、都心の下町をはしご歩きしてみた。日本橋をスタートして皇居、丸の内、浅草、上野と巡り、神田須田町で日が傾いてきた。あんこうの「いせ源」や鶏鍋の「ぼたん」に誘われるが、当面お酒は自粛の身。軽く間食をのっけられる店を探したら、前述の料亭に並び立つ重厚な建物の甘味処を見つけた。
「竹むら」は池波正太郎も通い作品にも登場する老舗で、風格ある建物は都の歴史建造物に指定されている。ガラリと戸をくぐると、奥に甘味を並べ売りする帳場が控え、その前の三和土に年季が入り艶のある卓が並ぶ。椅子に腰掛け、ゆるい明かりと時代ものの造作の中にいると、自身も時の流れから置いていかれそうで何とも心地よい。
ほの酸っぱい桜湯をすすりながらしばし待つと、名物の揚げまんじゅうが運ばれてきた。熱々のにグシッとかぶりつけば、衣がさっくり、やや厚めの饅頭皮がもっちり、そしてこしあんが控えめにサラリ。揚げてあるからボリュームがあるのに、あんが上品なのでスッと入っていく。この季節は雑煮もやっており、組み合わせ次第で間食ながら充分満腹にもなりそうだ。
持ち帰り分も追加して、紙袋片手に店を出ると、近所の料亭の行灯に明かりが灯りはじめている。神田須田町を堪能するなら、日が暮れてから町内界隈を腰を据えての「はしご」が、またよしの様相である。