
帯広は「とかちフードバレー」を推進しており、食による地域産業の振興を展開している。農業、畜産、酪農いずれも盛んな土地柄、食材のバリエーションは実に豊富。その質の良さもあり、素材とそれを生かした料理によって人を呼び寄せる力は、充分なものがある。
そんな当地の食材を使った料理を味わうべく、訪れたのは帯広にある「十勝農園」という地産地消レストラン。繁華街の中で店頭のトラクターが目を引き、レンガ倉庫を改装した店内は天井が高くホールのよう。店構えからして、十勝のスケールの大きさを感じさせる。
地場の野菜を用いた料理、ご当地の銘柄肉や畜産加工品、道東の魚介など、品書には周辺の産品を集めた料理が並ぶ。十勝に来たならやはり、味わうべきは肉と野菜。ブランド牛の十勝和牛に加え、野菜の補給に焼きキャベツをセレクトした。
先に運ばれてきた焼きキャベツは、熱々の鉄皿にざく切りのキャベツがたっぷりのった、品書まんまの料理。オリジナルのハーブオイルをさらりとかけ回して、そのまま数枚、まとめて口に運ぶ。シャクシャクかみしめると、その自然な甘さに驚愕。混じり気のない素直さに、頭で言葉を探しても見つからず、「自然」の意味の深さに思い入る。目を閉じると地平線までひたすら続く、十勝の大地のキャベツ畑。その光景がリアルに浮かぶ、想像力を掻き立てる甘さ、とでも言おうか。
総料理長の馬渕さんによると、今の時期の野菜は道内各地産を使っていて、アスパラは出初め、春掘りのゴボウがそろそろ、越冬して甘みの出たジャガイモなどが中心だそうである。十勝産の野菜が出回るのは6月頃からで、メニューにも地元野菜を使った料理が増えるという。十勝の「野菜力」の真髄を計るには、グリーンシーズンの再訪必須である。