釧路で炉端焼きが生まれたのは、北の海で揚がるとれたて極上の魚介あってのことだろう。素材の持ち味を存分に発揮させるのに、炭火の炉で炙り即座に味わうのは、実に理に叶っている。熱源でピークの火の通りになっているものを、極力その加減で食する。炉端焼きは魚介の味わい方として、究極の調理法と言っても過言ではない。

いくつか挙がる名店の中、このたびの釧路滞在では「炉ばた煉瓦」を選んだ。煉瓦倉庫を転用した店舗はホールのように広々しており、昭和のアドボードやBGMのオールディーズがレトロなたたずまいを醸し出している。炉端焼きといえば炉を囲むカウンター、そして巨大なしゃもじで料理が渡されるイメージだが、ここはテーブルごとに炉が据えられ、セルフシステムになっているようだ。

厚岸のカキに苫小牧のホッキ、釧路地物のシシャモと、目に付く道産ローカル魚介をじゃんじゃんオーダー。ホッキは白くなるまで炭の直上で、シシャモは焦げやすいので遠火で炙ってと、逐一焼き具合を指導してもらえるのが助かる。大粒ジュクジュクのホッキはコロコロに厚く、海底から出たてホヤホヤ、海味そのままな潮のインパクトが炸裂。シシャモはオスは身がパツパツと味が濃く、メスは卵がネットリと対照的な味わい。脂テラテラの鮭ハラスには、北海道のビール・サッポロクラシックがキリッと気持ちいい。

たまにバチッ、とはぜる炭火の近くで食事をしていると、火照りのせいかテンションが高ぶり、食欲も杯のペースもいつもより上がってくる。余計な手は加えず、ただ炙ってうまさを引き出す。北の魚介の究極の調理に、料理の「理」の原点を垣間見たような気がした。