印象派の巨匠・ルノワールの作品は、4種に大別されるという。自ら好み、楽しんで描いた「花」と「女性」。伝統的古典を重んじ関わった「裸婦」、晩年に住んだ南仏・地中海の「風景」。箱根のポーラ美術館の企画展「ルノワール礼讃」では、それぞれの代表的作品をテーマ別に集めてあり、各々の意匠の違いが楽しめる企画展となっている。

面白いのは展示室入口に並ぶ「アネモネ」「レースの帽子の少女」「水のなかの裸婦」。各種の代表絵画の揃い踏みは圧巻で、花と女性を並べての引き立て合いが見どころです、と学芸員の方が話す。「アネモネ」の右手前に配された鮮やかな花に、「レースの…」の少女の目線の交錯。見る者に訴えかけるインパクトは、異なる対象ながら似た意匠なのだろうか。

この美術館の企画展では、展示をモチーフにした料理もまた、楽しみのひとつだ。レストラン「アレイ」では、ルノワールが晩年を過ごした南仏の食材やご当地料理を取り入れたコースが用意された。港町を彷彿させるオードブルのシーフードマリネは、マグロの生ハムが甘く燻製香が馨しいこと。メインは仔羊のパイ皮包み焼きは、素材も調理法も彼の地ならでは。したたる肉汁と旨味がパイ皮で逃がさずコートされ、かぶりつくと笑顔があふれる逸品だ。

そしてデザートのフロマージュブランのムースは、見た目がレースの帽子仕立てになった楽しい一品である。レースに見立てたダンテルという焼き菓子がサクサク、帽子のホワイトチョコとフロマージュがカリッと甘くフワリ酸っぱく、味と食感とも見事なマリアージュ。実際の作品のごとく、印象的に訴えかけるインパクトが響いてくる。

4つの作風を拝観して、その世界観の料理を3品味わってと、まさにルノワールを目で舌で体感した企画展といえる。チケットやパンフに刷られた、レースの帽子の淡いタッチの「看板娘」。その微笑みの意図が、おかげでこれからはより深く伝わりそうだ。