
誰にも負けない味、他にないオリジナリティ。得意料理の定義は様々ある中、自分としては「体が勝手に作ってくれる」を挙げたい。何度も何度も作り続け、ルーティンが体に染み込んでいる。何も考えずに台所に立って、気がついたら出来上がり…とはオーバーにしても、かかれば自然に手足が流れていく料理、誰でもひとつはあるのでは。
小学生の頃から作っているカレーは、自分にとってまさにそのひとつ。野菜の切り方や順番、具材を炒める時間、水やルーを加えるタイミングなど、当時と全く変わらぬ流れで体に染み込んでいる。だから調理中、頭はどこかへ飛んで行き、物思いにふける貴重な時間。玉ネギを刻みつつ仕事の行く末を熟慮したり、おたまを回しながら子どもの将来に想いを馳せたり。
キッチンに充満するスパイシーな香りで、頭のスイッチが切り替わり、料理の出来にホッと我に返る。今宵のルーティンワークの仕上がりに期待をしつつ、瞑想タイムも終了。頭と心はおかげでスッキリ、お腹はすっかりペコペコの、心地よいディナータイムの始まりである。