店頭で焼いているたい焼き屋さんを、近頃あまり見かけない。子供の頃、商店街の店やスーパーの一画にあるコーナーで、その「職人芸」を眺めるのが楽しみだった。母親の買い物を待つ間のささやかな食エンタメは、子ども心にワクワクしたものだ。

鯛の半身の型が縦列に並ぶ鉄板に絶妙な量の生地を流し込み、あんをのせてしばらく焼いたら二つ折りのをガチャリと畳んでドッキング。シューッと焼き上がりパカリ鉄板が開かれたら、たい焼きに命が吹き込まれる瞬間。うわっ、と感嘆を漏らし、ホッと笑顔が漏れてしまう。

買い物袋を提げた母親の姿が見えたら、オーケーをもらう前におばちゃんに自分のをオーダー。あん盛りの行程で自分のが多めになるよう念じ、焼き上がりからそれを選んでその場でガブリ。腹からいけばこってり甘々な粒あんがほぐれ出し、頭や尾からいくとクリスピーな皮がカリリ香ばしい。作るのを眺め、できたてをいただくのが最高にうまいのを知った起源は、ア・ラ・ミニッツなたい焼きにあるのかも。