
酒飲みにとって、酒肴の役割とは何だろうか。酒の味を引きたて、量を進ませ、かつそのものの食味もいい。これら条件を満たすものは、大概「珍味」と称される。名の通り珍なり奇なる味は、酒とともに味わってこそ実力を発揮。料理の食材の相性でいわれる「出合い物」とは、酒と肴の関係でも極めて重要である。
酒との相性が完璧な酒肴をひとつ挙げるなら、名の所以からしても酒盗だろう。細かく刻んだワタの塩辛をチョンとつまみ、舌で転がし、ザクザクかみしめてから盃をキュッ。熟成した丸みを帯びたまろやかさが、盗まれ止まらぬ杯を至高の域へと引っ張り上げる。カツオやマグロの水揚げ地で、当地の地酒と合わせればなお良しだ。
ウニ、カラスミ、コノワタが、日本三大珍味だという。日本三大酒肴は制定がないようだが、私的にはクサヤ、ホヤ、酒盗あたりのラインナップだろうか。最高の珍味、最強の酒肴は酒飲みそれぞれ。人生をかけて素敵な「出合い物」を探すことが、酒飲みの道を歩く意義なのだろう。