8月の終わりに新サンマが出回り始めた際、今年は不漁で値段が高騰する、とのニュースを読んだ。それもさもありなん、と思ったのは、近年サンマの乱獲が問題になっているからである。船団を構え、巻き網や棒受け網で魚群をガバッと捉える漁法なだけに、資源の減少がここ数年深刻化。三陸沖から釧路沖にかけてが主要な漁場だが、漁獲が少ないから中小型のも獲ってしまい、不漁の悪循環が止まらない。

 同じ理由で、近頃はアジとサバはすっかり、大衆魚からランクアップしてしまい、イワシもそろそろ仲間入りといった具合。今年のサンマも、走りの時期には1尾500円オーバーで、庶民の秋の風物詩も風前の灯火か、と心配していた。その後の豊漁で値が安定し、最近は100円程度に落ち着いたけれど、資源保護を念頭に置いた操業が、今後必要になってくるだろう。

 値段のせいもあり、自分の今年の初サンマは遅れていて、先日横浜そごうのダイニングパークにあるブッフェレストラン「サファイア」で、初物を味わった。ホテルオークラ直営のダイニングで、ブッフェメニューの一品にあったサンマ飯が絶品。焼いたサンマをご飯に炊き込んであり、脂ののった新サンマのホクホクとした身が、これぞ日本の秋味といった感じ。刻みシソにショウガ、梅肉をのせてかっ込めば、ホテルメイドのオードブルもローストビーフも、とりあえず後回しの漁師めしである。

 目黒のサンマならぬ、ハマの新サンマが今年の初物になったが、このところの秋晴れの青空を見ていたら、銚子に飛んで行ってサンマの塩焼きが食べたくなる。そろそろサンマも肥え、漁場が陸に近くなるから、日戻り漁でその日とれたサンマも流通する。脂ノリノリの新サンマが七輪で焼かれ、モウモウと煙が立ち昇る漁港風景。遠くまで出漁して乱獲しなくても、旬の上物は待てばやってくるのだ。