ローカルごはん発祥のルーツは、いくつかのパターンに大別される。地元で普通に食べているものが他所者に評価された「常食系」、料理人の食事をグランドメニューにした「まかない飯系」、大量にとれる産品を売り物にした「特産活用系」、調理法を間違えたら意外にうまかった「ハプニング系」などなど。

 三重県亀山で最近注目のBグル、亀山みそ焼うどんは、サッと食べられエネルギーになる、働く人向けの「労働めし系」だ。名阪を結ぶ幹線国道沿いの場所柄、トラックの運転手が休憩する食堂が多く、ある店が味噌味の焼肉にうどんを一緒に炒めて出したのが始まりとか。濃い味ガッツリ系、かつオールインワンで短時間でかっ込めるのも、彼らに人気を博した理由だろう。

 亀山は列車の旅でも乗り換え駅で、乗継列車を1本落とすとちょうど1時間空く。途中下車して食べていけ、と言われているようなダイヤで、ありがたく駅前食堂の『みつわ食堂』の暖簾をくぐった。店頭には年季が入った蝋細工のサンプル、店内の壁には品書き短冊、冷蔵庫にはセルフサービスの小鉢。これぞ大衆食堂といったたたずまいで、何ともいえない居心地の良さを感じる。

 「アツアツなので、気をつけて」と、親父さんが鉄皿にのった焼うどんを運んできた。ジュージューうまそうな音をたて、花カツオがヒラヒラと食欲を誘い、赤味噌の香りが鼻から胃袋に訴える。ザザッとすすると、まさに見た目のイメージ通り。味噌の甘ったるさを花カツオがキリリと締め、これは常習性がある濃厚味だ。

 ベースの料理だった焼肉もしっかり味噌ダレにからみ、キャベツ、モヤシ、ピーマン、シメジがシャキシャキと爽やか。例えれば、タレ漬けジンギスカンを締めうどんと一度にした感じか。肉に野菜、炭水化物、加えて味付けは栄養価の高い豆味噌だから、実は労働者向けに理にかなった完全食なのかも。

 鉄皿のおかげで最後まで熱々でうまいが、残暑の暑さで食べ終わる頃には汗だくに。満腹になり体も熱くなり、おかげでパワーがみなぎったはいいが、この後は働かず列車に揺られるだけで、持ち腐れがもったいない…。