
松江から境港に向かう途中、中海でシジミの漁を見かけた。「相撲足腰」の語呂で覚える宍道湖の味覚・七珍の、「足腰」の「し」にあたる魚介で、腰まで水に入り熊手をひいて漁獲するから、かなりの重労働に見える。
宍道湖七珍は、魚種によって旬や漁期が異なるため、全部一度に味わえる機会は残念ながらない。加えていずれも漁獲が減っており、最近は意外に希少なローカル魚という。シジミは7つの中では量が確保できている方だが、それも漁獲制限による資源確保のおかげと聞く。
昼食をいただいた大根島は、高麗人参の栽培が盛んで、庭園「由志園」に着くと人参茶でひと息ついた。胃腸にいいらしく、暑さでバテ気味のところ食欲も回復したところで、料亭「菖蒲亭」で庭を眺めながら料理をいただくことに。
この日の会席は境港や宍道湖や中海の魚介をはじめ、県産の食材が中心だそう。七珍の料理を仲居さんに尋ねたら幸運にも、3品ヒットした。小鉢のシジミの佃煮は、身の渋みと砂糖甘い味付けで、ごはんが進む。「足腰」の「あ」にあたるアマサギは天ぷらで、小振りながら白身の味が力強い。見た目はワカサギに似ているが、乳製品的甘さは控えめ、切れ味のいい白身か。
そして小鍋は、「足腰」のふたつ目の「し」の白魚。笹がきゴボウと煮て、沸騰したら卵でとじ、柳川風で味わう。意外に太くホクホク、ホロリと食感が心地よく、湖魚らしい瑞々しさ。ゴボウの土の香りと、半熟卵のトロ甘さがそれぞれコントラストで、湖と大地の恵み満喫の一品である。
七珍は真夏や冬場が旬の魚介が多いらしく、今日はおあずけの「相撲」側の魚介は、季節を変えての再訪時の楽しみにしよう。「足腰」が語呂の料理を味わったし、午後の暑さの中の散策もしっかり歩きたいが、勢いをつけるにはついでに、人参茶のおかわりも欲しいところか。