昨日のお昼に食べたホルモンは、新世界界隈の労働者の食、と書いたが、大阪名物の串カツもルーツは同様だ。紙のように薄い牛肉に衣をつけて揚げた牛カツは、材料代が安く1本売りなので安価に出せる。加えて野菜や魚介など、様々な食材に応用もできる。
 
派手さはないが実質本位、かつ味のバラエティにも富んでおり、労働者にとってはうってつけの食。ちょっとお金が入ったときには、贅沢にあれこれ頼んだりと、プチ贅沢にも絶好のアテだったようだ。

 
今では新世界を散歩する観光客に絶大な人気の、浪花ファストフードのカラーが強く、あたりにある店は数十軒は下らない。呼び声が激しい店、ド派手なオブジェ看板の店など、個性が強くまるでテーマパークのフードコートに迷い込んだよう。
 
行列の人気2店を別格としても、どこもそこそこ客が入っているのは、全体的な味のレベルが高いのだろう。という訳で、行列も呼び声もなく入りやすそうな、『壱番』という店にパッと飛び込んだ。名前がいいし、何と言っても通天閣のまん前。ホーロー看板など昭和レトロをイメージした店内は、若いお客で大にぎわいである。

 
カウンターに落ち着くと、まずはおかわり自由のキャベツ盛りが登場。1セット目は定番の牛串に始まり梅シソササミ、キス、ニンニク揚げ、紅ショウガから。共用のソースに浸してクルリと回し、ガシッとかみつく。肉魚と野菜を交互に、1本食べてはキャベツ2枚が、胃がもたれないペースのよう。
 
2セット目は豚バラからベーコン、タケノコ、山芋。牛串で衣だけのすっぽ抜けをやってしまったので、豚バラはしっかりかみつき、慎重にグッとひく。大阪の串カツといえば牛肉の赤身をガシガシかじるイメージだが、これは甘い脂がグシッとジューシー。東京の総菜屋で、ネギと一緒に串になっているのを思い出す。

 
山芋やニンニクといった、スタミナ野菜の串も労働食らしく、ミナミ散策の滋養にもなりそうだ。9本で計1500円の値段もありがたく、扉をガラリと開けるとドーンとそびえる通天閣。その威容が、味にも栄養にも値段にも「これぞミナミの味、どや!」と誇っているように見えた。