
大河ドラマ「平清盛」効果で、清盛ゆかりの呉市音戸は盛り上がっている。大河ドラマの展示館は、団体バスで大盛況。海峡を見下ろす清盛像や、海峡の工事の無事を祈願した清盛塚など、ゆかりの史跡も多く、西日本で今最も熱い観光地かも知れない。
清盛がらみだけでなく、音戸の街は路地に古い商家や昭和レトロの菓子屋やパン屋などが多数残り、懐かしの風景散歩も楽しい。散策後、ドラマ館のレストランで昼食を食べるつもりが、音戸大橋直下の路地の「お好み焼き」の暖簾が気になる。
思い切ってくぐると、店内は扉の間口幅と狭く、右奥の年季ものの鉄板席の奥からおばちゃんがあら、ゴメンなさいね、と出てきた。タイル淵の鉄板席に落ち着き、しばし店内を観察。
後ろにはマンガ誌の作り付けの棚、その下に手書きお好み焼きメニューがズラリ。そして右には大型冷蔵庫に、大きな鍋でおでんがいい感じに煮えている。超レトロなタイムスリップ的空間で、鉄板をはさんでおばちゃんと対峙することに。
壁の品書きに玉子入り、肉入りなどある中、ぼたん焼きというのが気になりうどん入りにして注文。キャベツとネギ、豚肉を別々に炒め、うどんを加えて混ぜてソースで味付け。おばちゃんは絶え間なくコテを動かし忙しそうだ。
小麦粉を丸くのばして別に焼き始めると「ジャガイモ入れる?」との質問。おでんの串じゃがを入れるのがこの店流で、鍋からとって渡すとコテで切って混ぜ込んでいく。そして具を小麦粉にのせ、玉子を落としてひっくり返し、戻して塩、青のりをまぶしてできあがり。ビールを頼むと「冷蔵庫から瓶でも缶でもどうぞ。コップも冷えてるし、栓抜きも使ってね」と、何とセルフだ。
鉄板からコテを使い、熱々のをいただく。キャベツとネギの野菜系のシンプルなお好み焼きで、ほんのりソース味に食が進む。味付けは最後にソースをベタッ、マヨネーズをツルリの広島焼きと違い、ここのは焼きながらソースなどで味をつけるのが特徴。大阪のモダン焼きのやり方だそうで、味が濃すぎず野菜がおいしい。そしてゴロゴロのジャガイモが野菜のシャッキリさに対し、ダシのしみたホクホクさで、これはお好み焼きでは未開の味。さらに豚肉とベースの小麦粉がカリリと香ばしく、これでビールがうまい。
音戸のお好み焼きは別名、ぼたん焼きと呼ばれ、由縁を聞いたら「…さあ?」地元客にもよく使われる店で、近くの病院の受付の娘がやってきたら、2〜3人用の鉄板カウンターは満席に。広島人気質の話やカープ談義で一緒に盛り上がりながら、鍋のおでんをひょいひょいつまんでいる。話が弾んだのはいいが、「東京の人と話せてよかった、何だかタレントと会ったみたい(笑)」はちとオーバーでは?