フグが名物で知られる下関だが、トラフグにおいては産地ではなく
集積地といった方が正しい。かつて関門海峡でとれた地物は乱獲と環境汚染で超希少となり、現在は三河湾や瀬戸内、九州産のトラフグが流通の中心である。
 とは言え下関のフグブランドは依然強く、高く卸せる当地に各地からフグが集まってくるのは相変わらず。地物が減ったとはいえ、今もなおうまいフグは下関にあり、なのだ。
 
  唐戸市場でフグを扱う店を覗くと、萩産や長崎産と札に記された天然トラフグの身欠きが並び、身のほかにダシをとる中骨や頭、湯引き用の皮など、標本のように整然とセットされているのがどこかアートな感じ。
 ほか小ぶりのフグがまる一尾で身欠きにされて10尾ほどまとめて売っている。カナトフグやナゴヤフグで、やや安価な分こちらは地の天然ものが、今でも出回っているのだとか。

 2階の食堂街にある「市場食堂よし」では、これを使ったフグ唐揚げ定食が、何と750円で食べられる。丸のままのが2尾のっていて、コロリと丸い白身は淡白の極み。加熱で立ち上がった旨味が衣で封じられた、寸分の無駄もないフグ味は、てっさにもちりにも圧勝だ。
 高級トラフグだけでなく、庶民派フグで安くうまい料理もあり。下関がフグ処として名高い由縁は、こんなところにありなのだろう。