取材の3日目は新潟県に入り、1日村上市を回った。村上の秋といえば、サケ。そこでサケづくしの視察を役場の方にお願いしておいた。まずはサケの資料館である「イヨボヤ会館」を訪れた。イヨボヤとは現地の言葉で「魚の中の魚」の意。捨てるところなく利用されるサケに対し、最上級の経緯を表している。
 村上はサケ養殖の歴史が古く、なんとカナダの140年前の江戸期から、三面川に人工河川の「種川」をひいて採卵・受精・放流を行っていた。遡上するサケの9割がこの人工繁殖で、毎年800万匹の稚魚を現在でも放流している。
 最初に見学したミニ孵化場は、サケ孵化層にトレイに受精した卵が、日にち別に並べられている。1月に入ってからややすると稚魚になり、この施設では毎年5万匹を4月上旬に放流しているという。
 実際の三面川では、冬に地下水が湧出する川床に産み付けられた卵から孵化、4センチほどになったところで川を下りはじめる。下りながら昆虫などの餌を食べ、それにより川の匂いを覚えていくという。海に出る前には河口のタブノキの林に潜むのだが、この林が水を蓄えて川に送るため、この水の匂いを記憶して戻ってくるという説もある。川の記憶イコール水の匂い。いい水でなければサケが戻ってこない由縁だ。