
テレビ東京系の地元情報発信番組「出没!アド街ック天国」で、先日は箱根をターゲットにして放送していた。箱根はこれまでも何度か放映したことがあるらしく、今回は「格安の箱根」という切り口つき。破格の安さで泊まれる温泉宿や、手軽な立ち寄り湯など、いろいろなネタがある中、箱根名物のそばの項目で、意外な店が紹介されていた。それは「箱根そば」。小田急線沿線を中心に展開する、駅のスタンドそばチェーンで、中には生そばを使う店舗もあるなどなかなか本格的。水のいい箱根で名高いそばの名店のついでながらも、ランキング10位でとりあげられているのだから、箱根に行く機会はなくとも? ちょっと気になる存在である。
京浜急行で都内へ向かう途中に食事をする際、京急蒲田で途中下車することがある。庶民的なムード満点の商店街「あすと京急蒲田」には、定食や丼物、中華など、自分好みの手ごろな値段で食事ができる店が多いからだ。さらにさぼてんやペッパーランチ、麺ロードといったチェーンの飲食店も揃い、小田急沿線ではないが『箱根そば』も商店街の駅寄りに店舗を構えている。このときも中途半端な時間に京急蒲田へ降り立ったため、商店街中ほどの目当ての餃子の店が、あいにくちょうど休憩中。店を選びながらうろうろしている時間があまりなかったので、さっと食べられるそばにするか、とこの店に決めた。
駅のスタンドそばと違い、京急蒲田店はカウンター席やテーブル席があり、普通の蕎麦屋と同じようなつくり。メニューのほうもかけやきつね、月見といったレギュラー的なのに加え、季節の品や期間限定の品もいくつかあるよう。寒い時期には海老かき揚げそばやけんちんそば、中にはアンコウから揚げそばなんてのも見られる。とろろそばやめかぶそばなどが体にいい、と頭では分かっているが、腹が減っているとどうしてもお腹にたまりそうなのに気持ちが行ってしまう。かき揚げそばに決めかかったところで、さらに「かき揚げ丼セット」というのを発見。もとはといえば中華丼に餃子一皿でガッチリ食べるつもりだったことだし、これぐらいドン、といってもいいか、と頼んでみることにした。
立ち食い蕎麦屋のように、食券を買って調理場のカウンターへ出してセルフサービスで運ぶ飲食店は、何だか大学の頃の学食を思い出させる。ここも券を出してちょっと待つと、盆の上にそばとかき揚げ丼のふたつの丼が並べられ、自分で運んでカウンターの隅に腰掛ける。まずは、アド街ランキング10位のそばからひとたぐり。ここも生そばをつかっており、腰が結構しっかりして食べ応えがある。つゆが薄めに仕立てられているため、細めのそばは香りがよく、確かに駅のスタンドそばとは一線を画す出来。このチェーン、インターネットの「立ち食いそばランキング」や立ち食いそば愛好家の間でも、評価が比較的高い店なのもうなづける。
一般的にうまい蕎麦屋は、そばだけでなく丼物のできもいいというが、ここのかき揚げ丼のかき揚げも玉ネギ、ニンジン、ゴボウ、春菊にカボチャと、自家製の揚げたてと称するだけありなかなか充実している。何といっても、丼からはみ出す大きさが迫力モノだ。食べ始めはサックリした食感で、中はトロトロの揚がり具合。つゆが甘ったるくややしょっぱ目で、黒っぽくなるほどどっぷりつけられているのでかなり味が濃い。関東の人はこの醤油ベースの甘いタレを好むが、関西の人だったら見ただけで退散してしまうくどさだろう。
かき揚げはもちろん、ごはんにもたっぷりとタレがかかっていて、食べ進めていくと胃にはかなりヘビーにのしかかってくる。こういう激濃の味付け、ゴッテリの油モノののおかずで飯を食っていると、再び昔、学食で食べた料理の数々を思い出し、ちょっと懐かしい気分がする。とはいえ全部食べたらさすがに胃がダウンしそうなので、そばは平らげ、かき揚げ丼は3分の1残して店を後にした。その後、仕事についていても胃が少々重く、この日は結局夕食を食べずじまいにしてしまったほど。テレビの情報番組注目の生そばの味をじっくり味わうなら、今度訪れたときこそヘルシーなめかぶそばあたりにしておこうか。(12月食記)