
博多駅に近いモツ鍋屋で、珍しい白味噌仕立てのモツ鍋をつつきながら焼酎をかなり飲んだ。まだ宵の口、ホテルで休むにはちょっと早いようだ。店を出たらキャナルシティ博多の前を通り過ぎ、目指すは九州一の繁華街、中洲だ。福岡の味探訪の締めくくりはやはり、屋台である。博多の屋台は中州のほか天神、長浜を中心に、ラーメンやおでん、焼き鳥などおよそ200軒が営業しているという。那珂川にかかる春吉橋を渡ろうとしたところで、川沿いに15軒ほどの屋台が並んでいるのを見つけた。金曜の晩のためどこも結構な賑わいで、人気の屋台では行列をして待つ客の姿も見られるほどである。
店を決めかねてぶらぶら歩いていると、「ちょうど席が空いたよ」とお兄さんに呼び止められ、『やまちゃん』という屋台に落ち着くことに。屋台の前に設置された、川に面したテーブル席についたら、締めのラーメンの前にもうちょっと1杯、とおでんの盛り合わせを注文した。丸い薩摩揚げが魚の旨みとダシがたっぷり、かなりかたい牛スジをしっかりかんで焼酎をグイッとやれば、気分はすっかり博多っ子である。
そして仕上げは長浜トンコツラーメンだ。ここもラーメンの人気店で、長浜トンコツラーメンを頼むとキクラゲとのり、青のりがのったシンプルなラーメンが出された。さっそくスープをひと口。塩味が強く、荒っぽいこくは豚骨ならではの味わいで、スープにあまり手を加えず豚骨の風味で勝負といった、これぞ博多ラーメンの原点の味である。少々しょっぱいが、酒のあとにはいいかも知れない。
お洒落なモツ鍋屋のように、流行や時代の流れに合わせたものと、屋台のように昔のまま変わらないもの。同じ福岡の味をとっても、ずいぶん表情が異なるようだ。ホテルへ向けて歩いていると、右から左からどんどんかかってくる、呼び込みのお兄さんの声。ちょっとばっかり気になってしまうのは、さっそくモツ鍋の効果てきめん、といったところか。(2月中旬食記)