築地の場外は一般的に、晴海通りと新大橋通りから築地市場寄りのエリアを指している。築地市場から歩いて5分、目と鼻の先には賑わいを見せる銀座の街が。雑然とした雰囲気の場外市場と、銀座の延長といったハイカラなムードの街が、これらの通りを隔ててすぐ隣り合っているという訳である。

 その晴海通りと新大橋通りが交差する築地4丁目交差点の角に、築地共栄会ビルが立っている。地下から2階には鮮魚や水産加工品、乾物ほか食料品の店がびっしり軒を連ね、まるで通りを挟んですぐ向かいの築地場外がそのままビルになったようである。エスカレーターで地下へ下ると5軒程度の店が並ぶ飲食店街で、その中から選んだのは「バカウマ亭つきじラーメン」。何とも豪快な店名のラーメン屋で、先日に続いて朝からラーメンで朝食である。

 新大橋通りの店と違い、何人も座れそうな長いカウンターに座ってメニューを見ると、「みそラーメン」の文字が目に入る。醤油味のラーメンが主流の築地では珍しいので、これを注文することにした。運ばれてきた丼はモヤシやコーンなど具の種類が豊富で、スープは見るからに濃厚そうな色だ。まずはスープからひと口頂くと、すっきりしているがかなり複雑な味わい。鶏ガラからとっただしに炒めたひき肉やシイタケ、ネギを加えてあり、独特のこくが後をひく。そして味の決め手は新潟の栃尾産の味噌。築地で食べたラーメンはあっさり味ばかりだったので、これはインパクトがある。ほかにも食べごたえがある太めの麺、自家製の卵焼きやメンマなど具もなかなかのもの。特になるとがうまいのは、場外のかまぼこ専門店のものだろうか。

 冒頭の定義からするとここは築地場外の外側になるものの、手間暇かけた深みのあるラーメンは「早くでき、早く食べる」市場流ラーメンとはひと味違って新鮮だ。場外から通り1本隔てれば、街の雰囲気だけでなく味の流儀も異なるようである。(2004年6月7日食記)