
高知の西寄りにある土佐湾に面した町・須崎で名物の鍋焼きラーメンを頂いたおかげですっかり汗びっしょりになってしまった。鍋焼きラーメンを出す喫茶店「がろー」で食後に少し涼み、汗がひいたところで目指す四万十川方面へ向かおうと、須崎駅へと向かった。人通りの少ない商店街を引き返していると、沿道に洋菓子の店を発見。行きは空腹で鍋焼きラーメンしか眼中になかったせいか気づかなかったが、昔風の町並みにそぐわないしゃれた外観がなかなか目をひく。店内には喫茶コーナーもあり、梅雨の晴れ間の蒸し暑さでいったんひいた汗がふたたび出てきたこともあり、列車の時間待ちがてらちょっと涼むことにした。
ショーケースを覗いて驚いた。なんと、ここにも鍋焼きラーメンがある! 中にはカップサイズの鍋焼きラーメンがずらりと並び、ケースの前には鍋焼きラーメン風の焼き菓子など、鍋焼きラーメンを模したユニークなお菓子が各種そろっているのである。店のお姉さんに、喫茶室で食べていきたいんだけど、とケースの中のカップをひとつ出してもらう。これが須崎名物のもうひとつの鍋焼き、その名も「鍋焼きプリン」である。
今やすっかりご当地の名物料理となった鍋焼きラーメンにちなみ、この「一文字菓子店」の店主の谷脇由郎氏がつくり出した鍋焼きプリン、見た目のユニークさに目が奪われるが、無添加のプリンを土鍋をイメージした陶器に入れ、焼きプリンの要領で蒸したという、なかなか本格的なお菓子だ。一緒に頼んだアイスコーヒーを頂きながら、まずはスープをひとすすり… ではなくプリンをひとさじ。
それにしても、薄茶のスープに黄色い麺、ちくわにネギに玉子がのって、小さいだけで見れば見るほどさっき食べた鍋焼きラーメンとそっくりである。スープの正体はカラメルゼリーで、その下のカスタードプリンは卵がたっぷりでまろやかな甘さ。上にはマロンペーストの麺がのり、少し苦みが効いたカラメルに、ブランデー風味のペーストがちょっと大人向けの味である。具にも箸、ではなくスプーンをのばして、素材当てをしながら楽しむ。卵は白身が生クリームで黄身が桃、ネギはハーブ、さらにちくわはシューの皮と、技の細かさは感心するやら、おもしろいやら。特にちくわはまさか本物のちくわでは?と思うほどそっくりだ。
熱々の「本物」鍋焼きラーメンを食べたあとのデザートにさっぱりと、本日2杯目の鍋焼きを平らげ、支払いの時に目に入った「鍋焼きタルト」もみやげに購入。駅へ向かって歩きながら、ちくわはアーモンド、卵はドライフルーツ、ネギはいったい何だろう、と再び具の謎解きに挑戦である。(2005年6月16日食記)