今月中に答えを出すぜ!
やってられっか!
今までの肩書きは荷が重すぎたかな…。
一から出直します。
母さん、ごめんよ。
おれ30からちゃんとがんばるから…(笑)。
もう仕事引き際だなぁ。
これまでも充分むちゃくちゃされてきたけど…。
課長「あと3ヶ月でこの財団の経理全部引き継いでくれ。その後に給与納税現金もやってもらうからかなり大変になる。覚悟あるか。俺は忙しいから何もできないからしっかりやってほしい」
って…。
なんでチョクゾクの上司がノータッチで経理1年と少しのおれが財団の事業以外の管理部門全て一人で統括?(笑)
平然と言えるあの人は人間に見えない…。
常識的に不可能でしょ。
ちくしょう!
こうなったら
最後の切り札
教員免許!!
取るためのフリーター
この歳で…。できるかな…。
でも、死ぬ前に一度くらい“生きて”みてもいいよね…おれ。
おもしろいゲームもなく、なんとなくアメーバピグを始めてみる。
これが意外とおもしろい。
へー、デジタルワールドにはこんなにいろんな人がいるのかあ。
現在のマイブームはアメーバピグ。
リアルワールドは原発、梅雨で思う様に旅できないし
いいゲームが7月に出るのでそれまでは
デジタルワールドを冒険だ!
現状をリストアップして、自分を客観視してみよう。
書類選考に落ちた!
>主人公のテンションが6下がった!
>主人公は作戦を変更した!
>前向きさが6上がった!
朝、電車で両隣が若い女の子だった!
>主人公のテンションが3上がった!
>主人公のうんのよさが15上がった!
>主人公の品位が2下がった!
お昼の500円うなぎ弁当のタレがいっぱいかかってた!
>主人公のうんのよさが5上がった!
>主人公の体力が20回復した!
-------
うん、こうして見ると少しずつうんのよさが上がってきてる気がする。
とりあえず、新しい作戦でダーマ神殿を目指し、転職をしよう。
書類選考に落ちた!
>主人公のテンションが6下がった!
>主人公は作戦を変更した!
>前向きさが6上がった!
朝、電車で両隣が若い女の子だった!
>主人公のテンションが3上がった!
>主人公のうんのよさが15上がった!
>主人公の品位が2下がった!
お昼の500円うなぎ弁当のタレがいっぱいかかってた!
>主人公のうんのよさが5上がった!
>主人公の体力が20回復した!
-------
うん、こうして見ると少しずつうんのよさが上がってきてる気がする。
とりあえず、新しい作戦でダーマ神殿を目指し、転職をしよう。
ぼくはよく実年齢が下に見られる。
先日ウチの体重計が体年齢を計れることを知り、早速計測してみた。
1日目:実年齢-3歳。
2日目:実年齢-4歳。
3日目:実年齢-5歳。
今日:実年齢-6歳。
遂に弟の体年齢を下回りました。
この調子で若返るぜ!
先日ウチの体重計が体年齢を計れることを知り、早速計測してみた。
1日目:実年齢-3歳。
2日目:実年齢-4歳。
3日目:実年齢-5歳。
今日:実年齢-6歳。
遂に弟の体年齢を下回りました。
この調子で若返るぜ!
もはや周りの奴らはアテにできない。
完全自己責任の闘いが始まる。
さあ、検索の再開だ。
さすがにここまでの大災害の対応の知識はないので、ネットで大災害時の行動のイロハを検索する。
交通網は益々絶望の色合いを濃くしていた。
JRの「本日中の復旧はしない」というまさかの業務放棄宣言。
バスは辛うじて動いているも長蛇の列でいつ来るかはわからない。
地下鉄も安全確認で停止のままだ。
そうなると徒歩しかないが、どのネットの災害対策を見ても大震災時こそ余震や倒壊の二次災害の危険から無理な帰宅は避けるべき、となっていた。
確かに、移動中の水分補給やトイレの確保、地震による通行止めなどで経路変更を余儀なくされた場合の道順、その他不足の事態。
どれを取っても危険度が高すぎる気がした。
自宅までの道順をネットで調べてみると「17km、所要時間6時間」という途方もない数値が出た。
春先ならまだしも、まだまだ極寒の3月。革靴で薄いスプリングコートに所持金3000円に携帯は電池2。
夜中に歩いたことのない場所をこれだけの距離、こんな装備で無事に行けるのか…。
比較的大きな余震も続いている。
これは…やはり夜明けを待つのが得策だろう。
いや、それはわかっていた。
しかし余震の度にきしむ壁にヒビが入ったビルがもつのか?
そして何よりこの骸だらけの事務所で夜明かしなんて、気がおかしくなると思えた。
会議室では出前を取って酒を出し、宴会が始まっていた。
俺はもういいんだけどさ…と諦める人、引きつった笑いを浮かべながらお酒に逃げる人、テレビを凝視して動かない人。
みんなほんとは恐いだけなんだろう。
しかし…これが50近いおっさんらの取る行動か?
…。
ダメだ!
冷静な判断ができん。
しかし今、選択肢の中には“死”につながる危険なものもあるはずだ。ここで冷静さを失うのは命取りだ。
一度自宅の弟に連絡を入れてみることにした。
「こっちも調べてみてるけど、さすがにこの状況で飛び出すのはオレも無謀な気がする。」
…やっぱりそうだよな…。
「だよな…わかった。とりあえず行動開始は夜明けを待つ。状況が変わったらまた連絡する。」
…とは言ったものの、頭の中はこんなとこで夜明かしなんてできるか、という絶望感でいっぱいだった。一秒でも早く帰りたい!
…しかし、家族も無事なのに、ここでの判断ミスで自分が死んでは元も子もない。
半年先輩の平社員が「仕事今そんなにがんばっても悪いけど残業代は出ないよ~」と声を掛けてきた。
うるさい。
平で残業代承認の権限のない貴様に言われる筋合いはない。
どうせならもっと役に立つことを言ってくれ…。
時刻はPM8:30。
これから夜明けまで8時間以上あるだろうか。それまでこんな状態に耐え続けなくてはいけないのか…。
絶望に満ちた、ある意味人生で一番長く感じるであろう夜が幕を開けようとしていた…。
*・.・゜ ・.*'゜・・*・.・゜゜・
PM9:30
事務所内。
長い…まだ先程の決意から一時間しか経ってないのか…。
家族も心配だ。
大規模余震が起きない保証なんてない。
普段は地下鉄で通勤しているので、諦めずに地下鉄の状況をネットで常に確認する。
実は一路線再開した路線があった。
しかししばらくして「混雑のため運休中」となった。
やはり他の路線も今夜は無理なのか…
「あっ!!!」
思わずこの事務所で出したことのない叫び声が出た。
なんといつもの路線ではないが、自宅隣駅までいける路線が復活しているのだ!
この路線なら少し歩けばここからも乗れる。
時間PM10:00。今しかないと思った。
「お先に失礼します、皆さんご無事で…」
フルスピードで支度をして事務所を飛び出した。
夜道を小走りに駅に向かう。
しばらく歩いて駅に着くと、ツイてることにまだ復旧に気付いた人は少ないのか混乱はなかった。
電光掲示板に表示はなく、いつ次が来るかはわからないがアナウンスではまもなくと告げていた。
そして待ちに待った電車がやってきた。
無事乗り込む。
これでもうだいじょうぶだ。万が一途中で止まろうが何をしようが、できる限り自宅の近くまで運んでくれればそれでいい。あとは歩いてでも這ってでも帰ってみせる。そんなやる気が体中にみなぎっていた。
電車が進めば進むほど、先のホームが尋常じゃない状態になっていく。
最早すし詰めなんてもんじゃない。階段までぎゅうぎゅうに人が埋め尽くしている。
車内も圧死するんじゃないかというくらい混み合ってきた。
後半は誰も乗り込めず、ホームで見送られる。
自分は乗れて本当にラッキーだった。
あの人達は家に着くのはいつになってしまうんだろう…。
二時間後。
通常の倍以上の時間をかけて、おしくらまんじゅうでフラフラ汗だくの私は、なんとか自宅に辿り着いた。
日付は変わっていた。
翌日は仕事がないのがせめてもの救いか。
それにしてもこんなに帰宅がうれしかったことは、今までなかったと思う。
家族、命、いろんなものの大切さを気付かされたサバイバルだった。
混乱や被害はこの時点ではまだ、全貌が明らかにはなっていなかったが、確実にこの国のターニングポイントになるであろう様相を呈していた。
買い占めによる物資の消失、原発三機のメルトダウン、大規模停電による混乱…。
この後に、こうした本当の意味での“サバイバルが幕を開けるということは、この時、私はまだ知る由もなかった…。
→第一話へ戻る
完全自己責任の闘いが始まる。
さあ、検索の再開だ。
さすがにここまでの大災害の対応の知識はないので、ネットで大災害時の行動のイロハを検索する。
交通網は益々絶望の色合いを濃くしていた。
JRの「本日中の復旧はしない」というまさかの業務放棄宣言。
バスは辛うじて動いているも長蛇の列でいつ来るかはわからない。
地下鉄も安全確認で停止のままだ。
そうなると徒歩しかないが、どのネットの災害対策を見ても大震災時こそ余震や倒壊の二次災害の危険から無理な帰宅は避けるべき、となっていた。
確かに、移動中の水分補給やトイレの確保、地震による通行止めなどで経路変更を余儀なくされた場合の道順、その他不足の事態。
どれを取っても危険度が高すぎる気がした。
自宅までの道順をネットで調べてみると「17km、所要時間6時間」という途方もない数値が出た。
春先ならまだしも、まだまだ極寒の3月。革靴で薄いスプリングコートに所持金3000円に携帯は電池2。
夜中に歩いたことのない場所をこれだけの距離、こんな装備で無事に行けるのか…。
比較的大きな余震も続いている。
これは…やはり夜明けを待つのが得策だろう。
いや、それはわかっていた。
しかし余震の度にきしむ壁にヒビが入ったビルがもつのか?
そして何よりこの骸だらけの事務所で夜明かしなんて、気がおかしくなると思えた。
会議室では出前を取って酒を出し、宴会が始まっていた。
俺はもういいんだけどさ…と諦める人、引きつった笑いを浮かべながらお酒に逃げる人、テレビを凝視して動かない人。
みんなほんとは恐いだけなんだろう。
しかし…これが50近いおっさんらの取る行動か?
…。
ダメだ!
冷静な判断ができん。
しかし今、選択肢の中には“死”につながる危険なものもあるはずだ。ここで冷静さを失うのは命取りだ。
一度自宅の弟に連絡を入れてみることにした。
「こっちも調べてみてるけど、さすがにこの状況で飛び出すのはオレも無謀な気がする。」
…やっぱりそうだよな…。
「だよな…わかった。とりあえず行動開始は夜明けを待つ。状況が変わったらまた連絡する。」
…とは言ったものの、頭の中はこんなとこで夜明かしなんてできるか、という絶望感でいっぱいだった。一秒でも早く帰りたい!
…しかし、家族も無事なのに、ここでの判断ミスで自分が死んでは元も子もない。
半年先輩の平社員が「仕事今そんなにがんばっても悪いけど残業代は出ないよ~」と声を掛けてきた。
うるさい。
平で残業代承認の権限のない貴様に言われる筋合いはない。
どうせならもっと役に立つことを言ってくれ…。
時刻はPM8:30。
これから夜明けまで8時間以上あるだろうか。それまでこんな状態に耐え続けなくてはいけないのか…。
絶望に満ちた、ある意味人生で一番長く感じるであろう夜が幕を開けようとしていた…。
*・.・゜ ・.*'゜・・*・.・゜゜・
PM9:30
事務所内。
長い…まだ先程の決意から一時間しか経ってないのか…。
家族も心配だ。
大規模余震が起きない保証なんてない。
普段は地下鉄で通勤しているので、諦めずに地下鉄の状況をネットで常に確認する。
実は一路線再開した路線があった。
しかししばらくして「混雑のため運休中」となった。
やはり他の路線も今夜は無理なのか…
「あっ!!!」
思わずこの事務所で出したことのない叫び声が出た。
なんといつもの路線ではないが、自宅隣駅までいける路線が復活しているのだ!
この路線なら少し歩けばここからも乗れる。
時間PM10:00。今しかないと思った。
「お先に失礼します、皆さんご無事で…」
フルスピードで支度をして事務所を飛び出した。
夜道を小走りに駅に向かう。
しばらく歩いて駅に着くと、ツイてることにまだ復旧に気付いた人は少ないのか混乱はなかった。
電光掲示板に表示はなく、いつ次が来るかはわからないがアナウンスではまもなくと告げていた。
そして待ちに待った電車がやってきた。
無事乗り込む。
これでもうだいじょうぶだ。万が一途中で止まろうが何をしようが、できる限り自宅の近くまで運んでくれればそれでいい。あとは歩いてでも這ってでも帰ってみせる。そんなやる気が体中にみなぎっていた。
電車が進めば進むほど、先のホームが尋常じゃない状態になっていく。
最早すし詰めなんてもんじゃない。階段までぎゅうぎゅうに人が埋め尽くしている。
車内も圧死するんじゃないかというくらい混み合ってきた。
後半は誰も乗り込めず、ホームで見送られる。
自分は乗れて本当にラッキーだった。
あの人達は家に着くのはいつになってしまうんだろう…。
二時間後。
通常の倍以上の時間をかけて、おしくらまんじゅうでフラフラ汗だくの私は、なんとか自宅に辿り着いた。
日付は変わっていた。
翌日は仕事がないのがせめてもの救いか。
それにしてもこんなに帰宅がうれしかったことは、今までなかったと思う。
家族、命、いろんなものの大切さを気付かされたサバイバルだった。
混乱や被害はこの時点ではまだ、全貌が明らかにはなっていなかったが、確実にこの国のターニングポイントになるであろう様相を呈していた。
買い占めによる物資の消失、原発三機のメルトダウン、大規模停電による混乱…。
この後に、こうした本当の意味での“サバイバルが幕を開けるということは、この時、私はまだ知る由もなかった…。
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まもなく連載中のルポも一段落なので通常の日記を挟んでみる。
大好きなゲームの一つ、デビルサバイバーの2が出る!
まだかなり先だけどこいつは楽しみだぜ!
しかも1のアフターエピソードも出る! 3DSで!!
買うっきゃないかなぁ。
大好きなゲームの一つ、デビルサバイバーの2が出る!
まだかなり先だけどこいつは楽しみだぜ!
しかも1のアフターエピソードも出る! 3DSで!!
買うっきゃないかなぁ。
PM15:40
事務所内。
「ここ抑えて、心臓より高い位置にしていてください。」
流血する手をタオルで応急処置されたおばさん職員さんに、止血点を教える。前職で子ども達を守りたくて学んだ研修、こんなとこで役に立つとは…。
重いパーテーションが倒れかかった瞬間、間一髪その職員さんは机の下に滑り込み事なきを得た。
しかし手が残っていてパーテーションにぶつかり、何センチか切ってしまったようだった。
病院に行った方が良い、ということになり別のおばさんが近所の外科を調べている。
「避難場所みたいなとこに避難した方が良くないですか?」
一同「…」
黙ってテレビに見入る一同…シカトって…。
デスクに戻って自宅に電話をかける。
携帯が混線かなんなのかこの時はわからなかったが、遮断されてしまい使い物にならないので固定電話で先程からチャレンジを続けているのだ。
プルルル…
…出ない。
呼び出すのに出ない。
呼び出すと言うことは通話制限や電話の異常ではない。
繋がるのに家族が“出られない”ということだ。
最悪の事態だけが頭を支配している。
「クッソ~…出ろ~…」
かけ続ける。
カチャ
「はい、もしもし」
出た!
「もしもし、おれおれ。そっちは無事か?」
慌てると混乱を煽るだろうと努めて落ち着いて話す。
どうやら母は先月死んだ父の手続きがあって、たまたま休みが取れた弟と病院に行っていたとこだったらしい。
病院で震災に遭遇し、治まったところで、弟のとっさの判断ですぐさまタクシーを拾いなんとか帰宅できたとのことらしい。
病院周辺はその後瞬く間に人で溢れかえり、タクシーも電車も使えなくなっていた。
お互いの状況を確認する。
「とりあえず連絡は固定電話だ。今連絡がつかなくなるとまずいから、まだしばらく事務所で待機しつつ情報を集める」
すでにこちらも交通網はマヒ状態、タクシー会社にも電話はつながらなかった。
余震が続く中でアクションを起こすには情報がなさすぎる。家族の安否の確認も取れたし、ひとまず情報収集を優先した。
何より家族が無事でよかった。
先月の父の死が生々しい喪失の感覚を残している今、遺された家族まで失うことだけがとてもリアルで最も恐ろしいことだった。
さて。
最悪は脱した。
これからどうしたものか……。
*・.・゜ ・.*'゜・・*・.・゜゜・
PM6:00頃
都内某所。また別の会社。
「…俺、歩いて帰ります…」
「はぁ?マジで言ってんの?埼玉でしょう?」
ある一人の男が家族との連絡もつかない中、下したひとつの決断だった。
彼が会社を出発した一方その頃…。
私は病院にいた。
職員のおばさんに付き添って事務所近くの病院までやって来ていた。
ここは整形外科なので、本来はケガの縫合までは行わない。しかし、急遽先生を呼んでくれることになり、待っているところだった。
処置の終わったおばさんが出てきた。一時間くらい待っただろうか。
病院は全く混乱はなく、時よりそこに患者として来ているはずのお年寄りを迎えに来る人がいたくらいでいつもと変わらない様子だった。
無事事務所にもどると、おばさんの目を盗んで課長が声を掛けてきた。
「どうだった?」
「7針縫いましたが、大事には至らなかったようで何よりでした。」
「いやいや、あそう…いや、そうじゃなくてさいくらぐらい治療費払ってた?」
「へっ…? いや…○○円くらいですかね…。」
「そう…。いやほら、これ労災とかになっちゃうとさ…、何かとマズいわけよ。その額だと保険使ってるなぁ…。常務、なんかこちらからお金出して労災出さないように言えないですかね…?」
私は耳を疑った。
自分の部下がケガをしたのに、真っ先に言った言葉がこれなのか?
挙げ句裏工作だと?
別の職員達の会話が遠くで聞こえる。
「どうせ死ぬなら頭とかで一撃がいいわぁ。変に生き残ってもさぁ。」
余震がある度、とあるおじいさん職員は他の人を押しのけて机の下を確保している。
そして一切、我関せずでテレビに見入る者。
友人や後輩なら「しっかりしろ!」と声もかけようものだが…、これが自分の倍生きている人間の有り様なのか。
なんなんだ?
なんなんだ、こいつらは??
年齢を抜きにして、もはや目の前のモノが、人間に見えなくなっていた。
なんで自分はこんな所にいるのか…。
虚しさと喪失感。
今まで生きてきた中で、最大の虚無感に支配された時、心の奥に湧き上がる別の感情があった。
死ねない。
絶対に死ねない。
こんな骸(むくろ)に囲まれた中で、終わるような人生にしたくない。
おれの死に場所はここじゃないんだ!
→つづく
事務所内。
「ここ抑えて、心臓より高い位置にしていてください。」
流血する手をタオルで応急処置されたおばさん職員さんに、止血点を教える。前職で子ども達を守りたくて学んだ研修、こんなとこで役に立つとは…。
重いパーテーションが倒れかかった瞬間、間一髪その職員さんは机の下に滑り込み事なきを得た。
しかし手が残っていてパーテーションにぶつかり、何センチか切ってしまったようだった。
病院に行った方が良い、ということになり別のおばさんが近所の外科を調べている。
「避難場所みたいなとこに避難した方が良くないですか?」
一同「…」
黙ってテレビに見入る一同…シカトって…。
デスクに戻って自宅に電話をかける。
携帯が混線かなんなのかこの時はわからなかったが、遮断されてしまい使い物にならないので固定電話で先程からチャレンジを続けているのだ。
プルルル…
…出ない。
呼び出すのに出ない。
呼び出すと言うことは通話制限や電話の異常ではない。
繋がるのに家族が“出られない”ということだ。
最悪の事態だけが頭を支配している。
「クッソ~…出ろ~…」
かけ続ける。
カチャ
「はい、もしもし」
出た!
「もしもし、おれおれ。そっちは無事か?」
慌てると混乱を煽るだろうと努めて落ち着いて話す。
どうやら母は先月死んだ父の手続きがあって、たまたま休みが取れた弟と病院に行っていたとこだったらしい。
病院で震災に遭遇し、治まったところで、弟のとっさの判断ですぐさまタクシーを拾いなんとか帰宅できたとのことらしい。
病院周辺はその後瞬く間に人で溢れかえり、タクシーも電車も使えなくなっていた。
お互いの状況を確認する。
「とりあえず連絡は固定電話だ。今連絡がつかなくなるとまずいから、まだしばらく事務所で待機しつつ情報を集める」
すでにこちらも交通網はマヒ状態、タクシー会社にも電話はつながらなかった。
余震が続く中でアクションを起こすには情報がなさすぎる。家族の安否の確認も取れたし、ひとまず情報収集を優先した。
何より家族が無事でよかった。
先月の父の死が生々しい喪失の感覚を残している今、遺された家族まで失うことだけがとてもリアルで最も恐ろしいことだった。
さて。
最悪は脱した。
これからどうしたものか……。
*・.・゜ ・.*'゜・・*・.・゜゜・
PM6:00頃
都内某所。また別の会社。
「…俺、歩いて帰ります…」
「はぁ?マジで言ってんの?埼玉でしょう?」
ある一人の男が家族との連絡もつかない中、下したひとつの決断だった。
彼が会社を出発した一方その頃…。
私は病院にいた。
職員のおばさんに付き添って事務所近くの病院までやって来ていた。
ここは整形外科なので、本来はケガの縫合までは行わない。しかし、急遽先生を呼んでくれることになり、待っているところだった。
処置の終わったおばさんが出てきた。一時間くらい待っただろうか。
病院は全く混乱はなく、時よりそこに患者として来ているはずのお年寄りを迎えに来る人がいたくらいでいつもと変わらない様子だった。
無事事務所にもどると、おばさんの目を盗んで課長が声を掛けてきた。
「どうだった?」
「7針縫いましたが、大事には至らなかったようで何よりでした。」
「いやいや、あそう…いや、そうじゃなくてさいくらぐらい治療費払ってた?」
「へっ…? いや…○○円くらいですかね…。」
「そう…。いやほら、これ労災とかになっちゃうとさ…、何かとマズいわけよ。その額だと保険使ってるなぁ…。常務、なんかこちらからお金出して労災出さないように言えないですかね…?」
私は耳を疑った。
自分の部下がケガをしたのに、真っ先に言った言葉がこれなのか?
挙げ句裏工作だと?
別の職員達の会話が遠くで聞こえる。
「どうせ死ぬなら頭とかで一撃がいいわぁ。変に生き残ってもさぁ。」
余震がある度、とあるおじいさん職員は他の人を押しのけて机の下を確保している。
そして一切、我関せずでテレビに見入る者。
友人や後輩なら「しっかりしろ!」と声もかけようものだが…、これが自分の倍生きている人間の有り様なのか。
なんなんだ?
なんなんだ、こいつらは??
年齢を抜きにして、もはや目の前のモノが、人間に見えなくなっていた。
なんで自分はこんな所にいるのか…。
虚しさと喪失感。
今まで生きてきた中で、最大の虚無感に支配された時、心の奥に湧き上がる別の感情があった。
死ねない。
絶対に死ねない。
こんな骸(むくろ)に囲まれた中で、終わるような人生にしたくない。
おれの死に場所はここじゃないんだ!
→つづく
AM11:30
ある晴れたお昼前。
私は表参道を歩いていた。
その日はめずらしく仕事で外出していたからだ。
原宿表参道直近のマンションにあるちょっとオシャレで変わった司法書士事務所へお使いを頼まれていた。
またここが変わっていてメンバーが女性ばかり。基本、人としていまいちなおじいさんだらけの缶詰め仕事の毎日なので、久々に和やかな世間話に花を咲かせられたその日の私は上機嫌だった。
「あー、帰りたくねー。帰ったら事務所なくなってないかな。」
なんて、束の間の原宿散歩で憂さを晴らしていた。
しかし。
この時まさかこのセリフが、この日の午後にある種の現実味を帯びて自分に襲い掛かってくることになろうとは、私はまだ知る由もなかった。
*・.・゜ ・.*'゜・・*・.・゜゜・
PM3:00
午前中と打って変わって事務所のビルトイレ内。
トイレはこの地獄の缶詰め事務所で、唯一1人になれる避難場所でもある。
ユサユサ…
「ん…?」
揺れている…か?
しかしここはトイレだ。
万一地震だとしても、建物内では一番造りがしっかりするトイレにいるのが一番安全と何かで聞いたことがある。
ユサユサユサユサ…
「え…え…?ちょ…」
バガッバガッ
ドガガッ!
トイレ全体がきしみだした。
仕切りの壁が前後左右に大きく振れている!!
「嘘嘘ウソ!ゴメンゴメン…!!」
便座は水が溢れそうになりながら波打ち、体は左右に揺さぶられ立っていられない。
私はなぜか謝りながら、もはや地震かどうかもわからないくらいの激しい揺れに、たまらず身支度してトイレを飛び出した。
「うぉ…っ!」
廊下も左右にうねってまるで特急電車か何かの通路にいるみたいだ。壁伝いでないと歩けない。
後で考えると、このビルは耐震対策上揺れる造りであったこと、事務所が四階だったこと、立地が海に近く埋め立て地域に近かったことなどから、都内でも揺れが大きかったのかもしれない。
事務所が気になる。
扉を開け、中を見て愕然とした。
「…嘘だろ…」
机が左右に床を横滑りして、職員の人は掴まっているはずが、振り回されているように見える。
棚から物が飛び出し、事務所全体にバリバリ・メキメキと言った聞いたこともない轟音が響き渡っている。
そこがいつもの職場と理解するのに時間がかかった。
その間も揺れは続き、治まるどころか激しさを増す一方だ。
「…アレ…?これ、ビル折れんじゃない…?」
静かに這い寄る“終わり”の気配を感じた。
ダメか…さすがにこれは…。ちょっと待てよ…死ぬときってどういう気持ちでいたらいいんだ…なんて、怯えながらも意外に冷めた自分がいた。
ユサユサ…
ユサ…
…治まった。
安全を確認して、すぐに避難路の確保のため非常口に向かう。
非常ドアは無事開いた。
廊下の破損を確認する。壁にヒビがいっていた。だいじょぶなのだろうか…。
戻ると会議室のテレビがついていた。
そのテレビに映る映像に思わず声が漏れる。
「…お台場が…」
テレビには黒煙を上げるフジテレビ近くのビルがが映し出されていた。
東北が壊滅状態と緊張感に満ちたアナウンサーが告げている。
この国はどうなってしまったんだ…。
すると程なくして第二波が襲ってきた。
大きい!
第一波と同じくらいだ。また事務所全体に轟音が響き、うねる。
その時!
パーテーションの一つがあるおばさん職員に倒れかかっていくのが、まるでスローモーションのように視界に入った!
「あっっっ!!!!」
→つづく
節電の闇に紛れて、また猫が増えてきてる気がする…。
しばらく見かけなかったのに、この数日間で何回も出くわしている…。
気のせいならいいが……。
しばらく見かけなかったのに、この数日間で何回も出くわしている…。
気のせいならいいが……。