「御茶ノ水の朝岡選手…本部席までお越し下さい」

それは大会受付待ちの時に流れた場内アナウンスで発覚したのでした。…。

本大会には御茶ノ水から十数名ものメンバーが参加したのだが、いつもカウントする度に一人足りないので皆、不思議に思っていました。

そう。その一人とはなんと、我らが師匠、朝岡秀樹先生だったです!

確かに昨年末の忘年会の時、朝岡先生ご自身が、「現在、ドクターストップがかかる程膝の容態が悪く、何もしなくても将来歩行困難になるかも知れない…。なのでまだ体が動くうちに、もう一度チャレンジしたい…」と仰っていたので、恐らく柔術等の試合か、五段の昇段審査だろうと勝手に予想していました。

そして、最近の先生とのスパーにおいては、先生の攻めがアグレッシブになってきてきたので、試合へ向けて徐々にテンションを上げて来ているのだろう思ってましたが、まさか直近で今回の試合に、しかも一般部で出場されるとは予想だに出来ませんでした。(

数年前、自分の初段審査を朝岡先生の四段審査と同タイミングで受審させて頂いた時、先生の審査試合を拝見しましたが、公式試合での闘いを目前するのは初めてです。

先生の怪我を心配しながらも、どんな闘いをされるのか?期待を持って応援しました。

先生の初戦の相手は、成田支部のH選手。北斗旗出場経験もあり、太気拳のような開手構えから速いパンチに時折トリッキー打撃を織り交ぜてきます。また組み技も瞬間的な背負いなどを得意としており、ブランクを経ての一般部での初戦としては厳しい相手だと思われました。

序盤、いつも通りなサウスポー構えからリズムを刻む先生。 普段御茶ノ水支部で、我々が学んでいる内容通りの攻防で巧く相手の攻撃を躱します。

至近距離で紙一重で躱している訳でもないのに、相手のパンチが何故か先生の顔面を掠めて当たらないのが不思議です。

スピーディな攻防が暫く続くもお互い決定打は無いまま。試合が滞りかけたその瞬間、先生の高速タックル! 相手に上手くガブられるも、そのままプレッシャーをかけ続ける先生…。

柔術やレスリング技術に長けた先生ならどう対応するのか?と思った刹那…。そのまま体をら押し込み反転させながらの、まさかの「脇固め」! スピーディーな展開からのまさかの攻防に、会場は響めいた気がします。

特に柔術やMMA全盛の時代おいて、まさかUWF時代の必殺技が炸裂!

残念ながらタイムオーバーにて一本とはなりませんでしたが、想像を超える先生のテクニカルな闘いに興奮しました。

興奮冷めやらぬまま迎えた二戦目、なんと相手は早稲田所属のT選手。元々朝岡先生は早稲田出身で、卒業後も指導を続けており、現在御茶ノ水所属で元世界王者の中村知大先輩や元全日本王者の田中洋輔先輩は、早稲田出身です。

ということで、相手のT選手は朝岡先生の孫弟子という事になり、なんと年齢差30歳!

どのような世代を超えた闘いがどのような展開になるか、大いに注目されました。

序盤、伸びのある打撃を駆使する相手に対し、先生はサウスポーで小刻みなステップから出入りのフェイントを駆使して翻弄します。相手のリズムを崩すのが絶妙で、殆ど攻撃を貰わない上、要所でプレッシャーを掛けて優位に闘いを進める闘いは、まさに「老獪」と言えました。

中盤まで全体的に先生が空間を支配していたので、あとは後半に有効打を当てるか、テイクダウンしてポイントを取って勝利するのではと思った矢先…。先生が遠間から放った左手ミドルを、相手が受け流してテイクダウン?からのキメ突きで効果! 一瞬踏ん張れずに自ら寝技に持ち込んだようにも見えましたが、相手は先生が潜る瞬間を逃さず、見事なタイミングでキメ突きを放ちました。
その後、逆転の寝技を狙って下から先生は攻め続けますがタイムアップ。残念ながら判定負けとなってしまいました。

しかし年齢差とブランクを超えた素晴らしい先生の闘いに、会場から大きな拍手が巻き起こり、見ていた自分も熱くこみ上げるものがありました。

空道は空手系の武道に比べて歴史が浅く、伝統型も存在しないため、武術的な深さがないと言う意見も偶に聞かれます。

しかし50代の選手が現実的の闘いに近いルールの下、若手相手に闘える技術があるというのは、(勿論その方ご本人の強さもあると思いますが)に、武道格闘技としての深さと可能性(多様性も)を大いに感じるところです。

最近の出来事で言うと、偶々横浜北支部の藤澤雄司先輩とご一緒させて頂く機会があったのですが、その時拝見した直近の先輩のスパー動画に驚愕!

現役猛者選手のパンチを全く貰わず、しかも先輩だけ見えないパンチを当てて翻弄していました。

ボクシング的な反射を要する競技は加齢とともにパフォーマンスが低下すると言われますが、全く衰えを感じさせぬ動きに驚きました。

そして先輩は伝統空手が注目される前から、トップ選手と交流して研究されるなど構築された現在の技術論には眼から鱗でした。

他にも空道界には、浦和支部の渡邊支部長のように古流空手を独自に研究され、57歳にして全日本の一般部で実証される超人がいらっしゃいます。

そんな凄い方々に触発されながら、シニアの試合含め出来る限り競技や昇段に挑戦しつつ、空道の深さを味わっていきたいと思います。

朝岡先生、本当に試合お疲れ様でした。
先生の果敢な挑戦と素晴らしい闘いには本当に感動しました。

またご指導並びに稽古に付き合って頂いた皆様、十分な成果が発揮出来ず申し訳ございません。

これに懲りず、出来る限りはまた挑戦して行きたいと思いますので、

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今後共ご指導の程、宜しくお願い致します。 押忍






















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