監督=サム・メンデス(「アメリカン・ビューティー」「007 スカイフォール」など)


1917年4月、第一次世界大戦真っ只中のフランス西部戦線。

野宿の草原でたたき起こされた、若きイギリス兵のブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)とスコフィールド(ジョージ・マッケイ)は、エリンモア将軍(コリン・ファース)より、重大任務を託された。

折しも最前線では、連合軍と激しい消耗戦を繰り広げていたドイツ軍が撤退を始めていた。
この機に乗じ、連合軍は一気に攻め込もうとしている。

しかし、それはドイツ軍の仕組んだ罠だった。

それを偵察機で察知したエリンモア将軍は、即時攻撃中止を決断するも、前線部隊と連絡が取れない。
ドイツ軍が、総ての電線を切断していたのだ。

前線の味方1600人の命を救うためには、明朝までに作戦の中止を伝えなければならない。

そこで、白羽の矢が立ったのが、地図に精通したブレイクと、その親友スコフィールドだった。
前線には、ブレイクの兄も居る。
二人は直ちに前線へと向かうのだが…。


そこは、敵兵が潜み、銃弾が飛び交う危険地帯だった。
一寸先は、何が起こるか分らない。
正に、命懸けのミッションだった。



主人公の2人は、特殊能力があるわけでも、不死身の超人でもない。
地図に詳しいというだけで伝令を任された、普通の若者とそのバディなのだ。

だがそれ故に、彼等の目線は観る物の目線となって、戦場での極限状態を共に体感することになる。
まるで戦火に放り込まれたようで、五感に戦慄が走った!!!!!

無謀でも、進むしかない。
時間が無いのだ!

観てるだけで、息が苦しくなる。


ドイツ軍の使っていた塹壕。
敵兵が潜んでいるかもしれない…。
罠が仕掛けられてるかもしれない…。


やがて2人の前に、敵の戦闘機が不時着。
敵兵にかけた情けが…。




照明弾の明かりの中を逃げるスコフィールド。


どのように撮影されたのか、場面は途切れること無く、ワンカットで進み続ける。
それが中盤まで、スコフィールドが敵との銃撃戦で階段から転げ落ち、意識を失って場面が暗転するまで続く。
カットが変わったかもと思えるのはその1箇所だけで、その後もラストまで、場面は1度も途切れない。

資料によると、リハーサルに4ヶ月もかけたのだそうだ。
それが見事に結実して、恐ろしい程リアルな映像となって、戦場の緊迫感と恐怖を伝えてくる。
死は常に隣り合わせで、生きてるだけで奇跡なのだと。






いつの時代も、実際に戦場へ駆り出され、命を散らすのは、(職業軍人を除けば)名も無き若者達だ。
戦争を始めた指導者達は、いつだって一番安全な場所に居る。




個人的には、この作品こそが、アカデミー賞の最優秀作品賞・最優秀監督賞に相応しいと思う。


119分

94点