マミと出会ったのは、高1の冬。
さしてパッとする子ではなかったけれど、
巨乳であったことと、少し影があるところ、そして実直な性格が惹かれた。

県下有数の進学校だったことが災いし、Best of劣等生になっていた僕は
既に、学業から興味を失っていた。
一年続けた軽音楽もベーシストにコンバートされてからは、やる気の欠片も起きず
日々、何か刺激的なことはないかとアンテナを立てていた。

この頃、僕の中で流行っていた遊びは、校内飲酒。

体育会系クラブに入っていたことを理由にリポ●タンDに
ウィスキーを入れ、持ち歩いていた。
体育会系はエナジードリンク持っていても特に怪しまれない。

今考えれば、これがいけなかったと気づくのだが。

それでも、この頃は、ウィスキーが旨かった。
それでもやっぱりばれる。
「おいクリス。お前甘いなぁ?」
「ん?香りがだよ!」
「ふざけてるのか?」
バチッと平手打ちが飛んでくる。
「うちのクラスからお前みたいなボンクラだしたくないんだよ?わかるだろバカでも?」

などと当時では珍しくない熱血ドラマのような光景に
僕は自分がかっこいいと酔いしれていた。いや実際酔っているが。

誰しもが憧れる、不良だけれど、進学校で、頭はいい=モテる
という幻想が、僕のゴムマリの脳みそを支配しており、どうして頭が悪い。

マミと出会ったのは
そんな最中だった。

マミに出会ったというより、体育会系の違う先輩に恋をした。
同じく巨乳で、そして、天然。影があるのも同じ。

しかし、彼女はやたら人気があった。
先輩「クリス聞いてー。今日ねー朝練遅刻しちゃってさー。」
クリス【まじっすかー】
先輩「やばいと思ってベットで練習着に着替えちゃってさ。
   満足して2度寝しちゃったんだよねー。」
クリス【ベットで着替えはねーだろ?でも2度寝はあるなー】
先輩「それで、起きたら、またやっばーいと思って
   朝ごはんカレー食べちゃったの。」
クリス【??】
先輩「それでね。それでね。練習着にカレーこぼしちゃってさー。
    そのままガッコウきちゃったよ。ほら見てみ?」
クリス【・・・・・実話ですか】
といった感じのトークが標準装備である。
だからといってはなんだが、マニア層に大人気である。

マミはその後輩。
この先輩から、天然を若干取った感じ。そしてあまりしゃべらない。
今でいうブランドマーケティングという奴である。
そんなに先輩がもてるなら、この子も可愛いかもしれない。いやそうに違いない。

という邪な考えで、僕はマミに恋愛対象を切り替えた。
これは、功を奏した。
それはそうだ。
好きではないのだから、緊張しない。
好きではないのだから、「僕のこと愛して!!!こっちを見てぇ~~」とか、、ない。
それなりに大人のお付き合いができる。
とはいえ、当時はポケベルが全盛期。
コミュニケーションは公衆電話である。
上野界隈で幾度となくお世話になった某テレホンカード(裏銀)。
あれがあったから、あんなに喋れた。ゆうに500Hはしゃべった。

デートの回数を重ねると、
マミは徐々に本気に
僕は徐々にお勉強に
なってくる。
僕はというと
どう攻略したらいいんだろう~。とか
さっきのはいけなかったな。次はあのポイントをこう改善していこう。PDCAサイクルである。
奇しくも既にマネージメントになっている。

そんなお付き合いの中。
関係はドンドン進み、高2の夏まで来た。

僕は、夜、近所の公園に彼女を呼び出した。
愛の告白である。
花火やろうと言ってあるので、恐らく警戒心はないはずだ。
それでも、高鳴る心臓が、若い印だと思う。
少し多めのシングルモルトをあおる。

オープニングのキスから始まり
スケジュールは無事進行中だ。

しかし、僕のマネージメントに狂いが生じてきた。
ヤリたい。
おかしい。。そんなはずでは。。これはお酒のせい?夏のせい?
わからないが、やたら高ぶる。

つい、揉んでしまったりしてる。
何をしてるんだか。しかも生で。
そのへんから、僕はコントロールできなくなっていた。
抱き合っていると聞こえる吐息とか、色々な意味で大変だ。

中途でリアル警官に職質を受ける。
それは、花火禁止エリアだからなのか、いちゃいちゃしすぎなのか。揉みが生だからなのか。
悪意たっぷりの警官。
お勤めご苦労様。今ならわかるあなたの憤り。

そして、スケジュールはファイナルカウントダウン。
告白タイムと今でいうアフターが残るのみ。ホテルはホワイトハウス予約済。閑散期に予約する自分が可愛いが。

僕はこういった「僕で妥協しないか?」と。
マミいわく「うん。妥協する。丁度フラれたばかりなの。見返したいよね?」

っっっっ
奥が深い。。。。
あれほど一緒にいたのに、全くわからなかった恋心。
僕は滑り止めでしたか。
しかも共感したい内容の意味がわからない。。。

何故だ?!同伴なしだからか?などと思いはしませんでしたが。

当時は気づかなかったけれど
この出会いから、僕の人間失格時計がカウントダウンを始めたのでした。

ちなみに、ホワイトハウスはキャンセルで。
僕が初めて夜景を見たのは6才の時
親爺に連れられて、鹿島灘にあるヘッドランドをドライブしている時だった。

親爺は
「いいか。世の中には見なきゃ伝わらないことがある。お前みたいに頭でっかちで言葉をいじくっているうちは
大成せんぞ」
ともっともらしいことを云った。

さして遠くもないと父は言ったが、ゆうに3~4hは経過しただろうか。
暖房をつけない冬のドライブは若造にはとてつもなくミステリアスだ。
歯の根もあわない降霜の寒空、いつしか、快眠をむさぼる僕がいた。

遠くから親爺がかける声で、うすぼんやりと目的地についたと気づく。
眠い目をこすり、僕は無意識にシェラフを体に被り、外へ出た。

星降る空が第一印象で、パノラマビューとはこのことだと胸が躍った。

やがて見当違いだと僕は気づく。
親爺が指差す方向は、水平線の向こう、海原のその先をさしている。

なんということか。
それは紛れもなく、星のくず。
水平線に100や200では下らない無数の光。
またたく光はうねり、川をなしているではないか。

昔、僕は東京タワーで、夕闇せまる街から眼下に星のくずを見たことがあるが
モノが違う。


それは「イカ釣り漁船団」の光。漁火(いさりび)だった。
漆黒の闇に瞬くそれは、この世のものには見えなかった。
心が震えた。

僕にとってそれは、唯一の思い出であったし、
親爺との素敵な思い出など
記憶の断片にも残っていなかった。