『ホオナニ、フラおどります』
ヘザー・ゲイル 文
ミカ・ソング 絵
クウレイナニ 橋本 訳
さ・え・ら書房 2021年発行
図書館で、こちらをじっと見つめてくる女の子の絵本に会いました。
レイを首にかけて立つ少女、素朴なタッチですが、目の力が強く、意思の強さを感じさせます。読んでみたい!と思いました。
ホオナニは、ハワイに実在するこの女の子の名前です。フラは、ハワイの伝統的な歌舞音曲のことで、フラには、ダンス、演奏、詠唱、歌唱のすべてがあります。総合芸術でもあり、宗教的な行為でもあるそうです。
初めて読んだ時とても圧倒され、私に紹介できるだろうかと悩みました。
でも、ホオナニの姿に励まされて、今日、紹介させていただきます。
ホオナニは、自分が女だとは思っておらず、でも、男でもない、ホオナニはホオナニ、このままでいたいと思っていました。
姉さんは、そんなホオナニに反発しています。
ホオナニの学校の先生、クム・ヒナが、ハワイの伝統文化をテーマとするイベントで、高校生の男子に、古典フラを踊ってもらいますと発表しました。
ホオナニは、踊りたい!と思いました。
ホオナニはオーディションに挑戦します。
女だ!女か?女じゃないよな?!と驚く男子たち。
ホオナニは「自分を信じて、つよく、しっかりと」の思いで挑戦します。
そして、メンバーに選ばれ、リーダーを選ぶ日、オリという祈りのことばを発する姿、男子たちをオリの大きなうねりの中に巻き込んでいきました。
しーんと静けさに包まれ、やがて大きな拍手が…。
ホオナニは、みんなに心から認められ受け入れられ、リーダーになりました。
ここでも、「自分を信じて、つよく、しっかりと」ということばが繰り返されます。
私は、この場面がとても心に残りました。
自分は男と女の真ん中にいる!女とか男とか関係なく、自分を信じていくこと!
そして、迎えた本番の日。
「自分を信じて、つよく、しっかりと」「アイカム厶ケーケー!」
これは、どういうふうに読んだらいいのかわかりませんが、ホオナニの声はホール中に響き渡りました。
やりきったのです。
ハワイには、昔から、女と男、その両方の特徴を持っているマフーと呼ばれる人たちがいました。
ホオナニは、マフーになったのですね。
すべての人がそのまま受け入れられること、認められること、自分の居場所が誰にもあることが、一番大切だと思います。
この物語の基になったのは、「まんなかにある場所 A Place in the middle」というドキュメンタリー番組です。
この絵本の前書きに、ホームぺージアドレスとQRコードが載っています。ぜひご覧ください。
ホオナニ、素晴らしい指導者のクム・ヒナ、仲間たちの姿が見られます。
この絵本を読んだ後、ドキュメンタリー番組を見たら、わかりやすかったです。
そしてまた絵本を読んで…難しいのですが、深くこの絵本を知ることができました。
ジェンダーフリー、LGBTの絵本だと思います。現在では、LGBTQ+ということばも聞かれます。
トランスジェンダーは、生まれた時に割り当てられた性にとらわれない性別のあり方を持つ人のこと。
ホオナニの先生、クム・ヒナも、トランスジェンダーとして様々な社会活動をされています。
いろいろなセクシャリティがあっていいのだと思います。
この絵本に出会えてよかったです。大人の方にぜひ読んでいただきたいと思います。
もっともっと、LGBTQ+について知りたい、考えていきたいと思います。
皆と同じでなくていい、一人一人違っていていいのですよね。
黒の輪郭に囲まれた水彩画は、ホオナニの生き方、考え方がよく伝わるいい絵だなと思いました。
とても合っています。