桜を見に行った
桜が見たかった 
五分咲きの桜の下
シートをひいて
長女がつくってくれたお弁当を食べる
芝生の方へ駆け出し
遊びはじめる子どもたち
「父さんも来て～～」っと誘われ
出掛けていく夫さん
私は
桜の木の下で
そんな三人を眺めていた
(長男は友人とおでかけ中)
穏やかな時間
時折
娘たちが
きれいに散り落ちた桜 
を届けに
を届けに戻ってくる
ゆっくりと時間が過ぎ
「さぁ～帰ろう！」
荷物の全部をみんなで持ってくれ
歩きはじめた
夫さんの左側に空いた手を見つけ
繋ぐ
24歳で脳腫瘍になり
40代、二度倒れた
左半身にちょっとの不自由を残し
それでも日々を過ごしている
左足を捻挫した人のように
少し引きずって歩く彼のスピードは
とてもゆっくりで
その姿に老いを感じ
元々早足だった私は
次第に彼と共に
並んで歩くことが少なくなっていった
そんな彼の横に今
私が居る
一緒に歩いてる
歩く振動が体に響き
体力もない私
一緒に歩きはじめていたのに
だんだんと遅れをとって
彼の三歩後ろを歩く
繋いだ手も伸びて遠ざかっていく………
ゆっくりだと思っていた
彼の歩くスピードに
もっともっとゆっくり歩く私が居た
フッと緩む手
氣つくと彼は、三歩後ろに下がり
私のすぐ横にいた
私の歩幅に合わせ
一緒に歩いていてくれた
私は待てなかった
そんな私を彼は
三歩下がって待っていてくれた
共に歩んでくれた
ゆっくりゆっくり歩く私たち
繋いだ手も
ゆっくりゆっくり揺れている
そんな二人を見て
ニヤニヤうれしそうに顔を覗く娘たち 
三歩後ろを歩く私に
三歩下がって
一緒に歩いてくれた彼
こうやって歳を重ね
氣持ちを重ね
間違えもすべて重ね
共に生きていくんだなぁ～
フッと見ると
来たときより桜の花が開き
やさしいやさしい桜色が
ひろがっていました…………
