「百年と一日」柴崎友香(ちくま文庫)

 

 

なんだか不思議な短編集

 

各話のタイトルがタイトルというより要約?みたいになっていて

でもそこだけを読んでも何のことだかわからない

 

時も場所も登場人物も

思い思いにピースを選んで組み合わせる遊びのような

雑然とした小さなストーリーの詰め合わせ


「地球上のいつかどこかのある数年間を、あるいは数十年間を

 無作為に切り取って寄せ集めてみたんですけど、それが何か?」

 

とでも作者から言われているような・・

 

まるで前衛的なモノクロのドキュメンタリー映画を見ているようです

 

 

毎日同じ時間に路地を通る猫の行く先を追ってみた話とか

屋上にある部屋を探して、そういう部屋にばかり住み暮らす男の話とか

寡黙だった妻があることをきっかけによくしゃべるようになった話とか

 

大きな事件が起こるわけでもない、どこかの誰かの話が淡々と繰り返される中に

どことなくユーモラスな味わいもあって、ついつい笑ってしまったり

淡々と語られているのに、どこか生々しい感じがあったり

1つ1つの話に妙に引き込まれてしまいます

 

各話の間にふと意識が戻ると

ザワザワ、ガヤガヤ、駅の雑踏の音が耳によみがえってくるような

そんな不思議な感覚になったりもします

 

 

 

 

(ほぼ)4月の本箱