「コロナと潜水服」奥田英朗(光文社文庫)

 

 

ちょっと不思議な5つのお話を集めた短編集

 

 

表題作「コロナと潜水服」

息子がどうやらコロナの感染を感知(予知?)できるらしいと気づいた父親

その父親は息子の反応を見て

自分がコロナに感染してしまったのではないか?と疑心暗鬼になり

防護服代わりに潜水服を着て自粛生活を始める・・

 

話の設定自体がぶっ飛んでますが

コロナのパンデミックで非常事態宣言、なんていう事態が現実にあったこと自体

ぶっ飛んだ話ではありますね

 

至極マジメに潜水服を着て生活するちょっとポンコツな父親と

そのパパが大好きな息子のほのぼのコンビが絶妙です

 

 

「パンダに乗って」

パンダというイタリア製の中古車を購入するために新潟に来た男性

車を受け取って走り出すと、カーナビが勝手に目的地を案内し始める

車は前の持ち主の思い出の場所を次から次へとめぐりながら

最後に一番会いたかった人に会いに行く・・

 

幽霊に憑りつかれているらしい車の気が済むまで

その旅につきあってしまうこの男性も大概お人好しだなあ、と

 

 

「海の家」

古い日本家屋を短期間借り受けたちょっとヘタレな作家の男性と

その家に棲みついている少年の幽霊とのお話

この幽霊少年の行動が健気で・・、きっと優しい子だったんだな、と

 

 

「ファイトクラブ」

リストラに抵抗して ”追い出し部屋” に配置転換されたおじさん社員たち

そこに1人の老人が現れ、彼らにボクシングの手ほどきをしてくれるのですが

そのコーチが実は幽霊だったというトンデモ話

 

 

「占い師」

恋人との関係に悩むフリーアナウンサーの女性が訪ねた占い師

その占い師と2人で祈祷をすると彼女の希望が怖いくらいに叶ってしまうのですが

やがて占い師は忽然と姿を消してしまい・・その正体は謎のまま?

 

 

 

どれもこれも

幽霊だの何だの、いわゆる "超常現象" を題材にしているのに

ほのぼのしていて、おかしくて、優しい味わいのお話ばかり

5編とも全部、面白い!

 

文庫本の帯に「奥田英朗のマジックアワー」とありましたが

ーーまさにそれ! でした

 

 

 

 

夕空に綿菓子を千切って浮かべたみたいな雲がぽか~んと・・照れ