「サキの忘れ物」津村記久子(新潮文庫)

 

 

9つのお話を収めた短編集

 

表題作「サキの忘れ物」がとてもいい

というか、深いなあ、と

 

1冊の文庫本を手にしたことから

千春の人生は(大きく決定的に)変わったのですよね

 

そこに、その文庫本がなかったら

その文庫本をお客さんが置き忘れる、なんてことがなかったら

そのお客さんが、お店の常連さんでなかったら

 

あるいは、その本を

気まぐれにせよ何にせよ

読んでみようと思わなかったら・・

 

 

いくつもの選択肢が用意されているゲームで

ある1つを選んだら、また次の選択肢が広がっている

 

別の選択をしていたら

そのゲームはまったく別のところにたどり着く

 

人は誰でも、日々、そんな選択を

意識している、いない、にかかわらず、やっているはずで

 

彼女は、彼女にとって幸運な選択をしたのだな、と

 

短編とは思えないほど

ギュギュっといろいろなことが詰まっているお話でした

 

 

 

「王国」

子どもが正体不明の生物に見えるとき、ってこんな感じかも

と思いつつ

この子のアタマの中の王国は、たぶんワタシにも覚えがあるなあ、と

 

「隣のビル」

こちらもまた、ある選択(をしてしまった人)のお話

かなり突飛な行動ではあるけれど

そうしてまたその人の未来が変わっていくのだなあ、と

 

 

そのほかの短編も

なんだかチリチリするような皮膚感覚だったり

読み終えて、アハハと乾いた笑いがこぼれてしまったり

永遠に終わらないお話?だったり

ちょっと不思議な感覚を味わえる・・そんな短編集でした

 

 

 

 

この夏の読書のお供 ~「レッドベリーズ」

酸味のある紅茶で、暑い季節になると飲みたくなります