「ぎょらん」町田そのこ(新潮文庫)

 

 

ぎょらん とは

 

魚の卵 に似ていることからそう呼ばれるもので

 

死者の思いが残すもの

 

・・という「都市伝説」みたいなものをめぐるお話

 

 

 

「ぎょらん」とは何? という謎解きが主題ではなく

 

「ぎょらん」の形をとった「死者の思い」を

真正面から受け取ってしまったために

苦しんだり、悩んだりした人がいて

一方で、救われた人もいて

 

「ぎょらん」を見た、という人や

「ぎょらん」を食べた、という人が

意外にも身近にいて

思わぬ形でつながっていきます

 

 

その中で

物語全体のキーパーソンとなっている「朱鷺」

 

漫画オタクでニートでひきこもりの青年として登場しますが

悲しいことがあった妹のために

「ぎょらん」によく似た小さな珊瑚玉を無理やり嚙み砕いてしまう

そんな彼が、なんだかワタシはすごく好きです

 

やさしすぎたり

感受性が強すぎたりして

いろいろなことを適当にやり過ごすことができない性質の人って

何かと生きづらさを感じているんだろうな、なんて思ったり

 

何にせよ

自分がいつか見つけるかもしれない「ぎょらん」は

「呪い」ではなく「救い」であってほしいな、と思ったり

 

大切な人の死ときちんと向き合える自分でありたいな、とか

ちょっと殊勝なことを思ったり

 

 

結局、「ぎょらん」とは何なのか?

朱鷺はずっとその答えを探しながら生きていくのだろうな、と

ホント、不器用な(愛すべき)人だなあ、と

 

 

 

 

雲の向こうに、昼の月