「最果てアーケード」小川洋子(講談社文庫)
義眼屋さん
ドアノブ専門店
勲章店
そんな特殊な店が入っているアーケード商店街
ドーナツ屋さんや
レース専門店
レターセットなどを扱う紙店など
普通にありそうな店もあるけれど
そこで商売している人々が
やはり、どこか浮世離れしていて
日本のどこかにありそうで、どこにもなさそうな
あるいは ”時空のひずみ” の中に取り残されたような
そんなアーケード商店街の中で暮らす「私」の物語
商店街の人々はみな、物静かで、ひっそりと生きている
そして「私」の成長を慈しんで見守ってくれている
この物語の、静謐な空気感の底には
「私」が抱える悲しみが、声もなく降り積もっているようで
そして
使われていない電話番号
「私」自身の髪で作ってもらった遺髪レース
雄ライオンのノブの奥にある暗がり
止まってしまった人さらいの時計
それらの意味するところは何だったのだろうか、と
「私」は本当に今そこに生きているのだろうか、と
その存在が、どこかおぼろげで、ふと揺らいでしまうような
不可解な場面がところどころに差し込まれていて
読み終えたあとも、不思議な余韻の残る物語です
(ほぼ)10月の本箱