昭和44年8月東京公演


宝塚歌劇 8月雪組公演

ミュージカル 『回転木馬』
-モルナール原作“リリオム”より-
  
東京宝塚劇場

 

 



二部九場


脚本  オスカー・ハマースタイン2世
音楽  リチャード・ロジャース
翻訳  倉橋健
演出・振付  エドワード・ロール
演出補  川井秀幸
編曲  入江薫
編曲  吉崎憲治
音楽指揮・歌唱指導  橋本和明
振付補  鈴木武
装置  石浜日出雄
衣装  静間潮太郎
ヘア・デザイン  畠山順吉
ヘア・ドレス提供  畠山美容室
照明  今井直次
小道具  生島道正
効果  村上茂
音響監督  松永浩志
演出助手  太田哲則
音楽指揮  井沢達雄
演奏  東京宝塚劇場オーケストラ
男性コーラス  宮崎健太郎ほか
舞台監督  尾崎洋一
舞台監督  北村文典
製作補  山内鉞郎
制作  野田浜之助


配役
ビリー・ビグロー
  真帆志ぶき
ジュリー・ジョーダン
  大原ますみ
キャリー・ピパリッジ
  新三矢子
イノック・スノー
  牧美佐緒
ジガー・クレイギン
  風さやか  
ネティ・ファウラー
  高宮沙千
マリン夫人
ドクター・セルドン
  大路三千緒
バスコム氏
  岸香織
カーニバル・ボーイズのリーディング・ダンサー
  亜矢ゆたか
スノー・ジュニア
  汀夏子
ルイズ  
  摩耶明美


ものがたり
 1837年。ニューイングランドの海岸町にある遊園地。ビリーは回転木馬の呼び込みをしていた。そこへこの町の紡績工場で女工をしているジュリーが、友だちのキャリーといっしょに遊びにやって来た。
 ビリーはジュリーの美しさに魅かれ、二人は愛しあうようになった。一ヵ月が過ぎた。ビリーはジュリーとの結婚を機に、まともな職につこうと探すのだが、仲々みつからない。でも、外は六月、この地方では一年中でいちばん良い季節、若者たちは晴れやかに歌い踊る。
 仕事につけないビリーの前に不良のジガーが現れ、町の紡績工場へ押し入る話に一枚のらないかと誘った。ジュリーからやがて子供が生まれてくるのを聞かされたビリーは、金欲しさからその話にのった。
 一方、町の人々は、湾に浮かぶ小島で年に一度のピクニックを開くのに忙しい。このチャンスに、ビリーとジガーは、工場の経営者バスコム氏に襲いかかるが、反対にねじふせられ、逃げようとしたビリーは、あせってつまづき、持っていたナイフで自分の胸を刺して死んでしまう。
 天国にやってきたビリーは、神の裁きで一度だけ地上に戻ることが許された。懐しい海岸町に帰ってきたが、早くも十五年の歳月が過ぎていた。
 泥棒の子とののしられながらも、ビリーの娘ルイズは、美しく明るい娘に成長していた。
 ビリーは、天使から失敬してきた天国の星をルイズにやろうとしたが、娘は受け取らない。腹をたてたビリーは、思わずルイズをぶってしまう。ルイズは母親のジュリーのもとにかけつけて、「変な人に逢ったよ」と告げるのだが、ジュリーには夫の姿がみえない。「たたかれたけど、少しも痛くなかったよ」というルイズの言葉に、ビリーは自分の気持が通じたのだと、うれしく思うのだった。
 やがて、ルイズの卒業式。
 ビリーは妻と娘の幸せを願いつつ、天国へ去っていくのだった。

 

 

 

 

昭和44年回転木馬

 

 

 



〈出演シーンとナンバー〉

第一部

第一場
プロローグ

第三場
ネティ・ファウラーの軽飲食店
「ブロー・ハイ・ブロー・ロウ」
 …そこへ、水夫達が舞台奥でうたう「ブロー・ハイ・ブロー・ロウ」が聞こえてくる。これは、6/8拍子の男性的な曲である。この歌の途中、悪友のジガーがビリーを犯罪にまきこむ芝居が入る。ジガー、ビリーのソロの部分があって合唱になり強く盛り上がって次の「ホーンパイプ」の踊りにつながる。
 この踊りはこの作品中最も大きなダンス・ナンバーである。

 

 

 

昭和44年回転木馬


第二部

第一場
湾の向うの島
「石屋は石をきざむ」
 ジガーに口説かれているキャリーを見つけたスノーが、幸福な夢を打ち破られた悲しさと失望を歌うとジガーは、「石屋は石をきざむ」といやがらせの歌をうたう。
 スノーの悲しさがかえってこの場をユーモラスにする。

第二場
本土の波止場
 
※ナンバーの解説は、入江薫(編曲)「ミュージカル・ナンバー 解説」による

 

 

 

 

昭和44年回転木馬

 

 

 


 

 

ジガー
Jigger

 

 

ジガー「回転木馬」


 配役では、主人公ビリーに悪だくみをもちこむ悪役ジガーに誰をあてるか、これはスリリングな愉しみだったが、風さやかという当然と意外さが雑居する新鮮味があり味のあるキャストである。『オクラホマ!』出演に際し、ジャッド役の苦労を契機に今日の古城都を大スターに実らせた歌劇団の英断を思うにつけ、古城とは又ちがった意味で今後の風さやかには一層の期待がもてよう。こういう宝塚らしからぬ変った個性が多ければ多い程、それだけ舞台の面白味も増すので、異色スターをもっともっと育てて欲しいのである。こういう点でもジガー役=風さやかの責任は大きい。

 

南川貞治「随想『回転木馬』」より

 

ジガー「回転木馬」


 捕鯨船の船乗りだが、失業中のビリーと親しくなり、一獲千金を夢見て、彼に強盗の片棒をかつがすべく接近。まんまと仲間に引き入れるが、計画が狂って犯行に失敗する。いわば人生を斜めに見てアウト・ロウ的生き方をしてきた男だ。
 37年、初舞台当時は一時娘役だったが男役に転向、漆黒の髪の毛を一度も染めず、舞台はトップ・スター上月晃の“ブラザー”のような印象を与えているが、近作『ヒット・キット』『祭』などでは精カンなマスクで切れ味のいい踊りを見せている。男くさい男役の割には演技面でこれといっためぼしいヒットはないが、このジガーは風さやかの強烈な個性にドンピシャリ。持ち味を生かしてアクの強い演技を見せ、宝塚に異色の性格俳優の誕生を思わせる。

 

上田善次「主な出演者の横顔」より

 



〈舞台写真集〉

 

 

昭和44年回転木馬

 

 

昭和44年回転木馬

 

 

昭和44年回転木馬

 

 


〈サイン入りブロマイド〉

 

ジガー「回転木馬」

 


新人公演
第1回 8月14日午後1時
第2回 8月21日午後1時
ビリー  汀夏子
ジュリー  摩耶明美
イノック・スノー  楠かおり
キャリー  七津あけみ
ネティ  玉梓真紀
ジガー  志都美咲
マリン夫人 (1回目)葉山三千子 (2回目)松本悠里


(昭和44年8月2日~9月3日)