2024.5.31
「となりのトトロ」や「千と千尋の神隠し」のようなジブリ映画には、異界への入り口がはっきりと示されている。ファンの皆様はよくご存知だろう。
トンネルや橋、扉、穴……
それらは異界への入り口だ。
注文の多い料理店(宮沢賢治作)では
山や西洋造りの一軒家が異世界への入り口だ。そこから異世界へと入っていった主人公たちは恐ろしい目にあう。
こうした話はずっと昔からあって、
昔話の中では例えば
「おむすびころりん」では
おじいさんはおむすびに導かれて、地下の世界へと落ちていく。
しかし、それよりもっと古くから異世界に入っていく話はある。仏教では、三途の川が流れていて、この世とあの世を結ぶ、後戻りのできない橋が三途の橋だ。
異世界にかかる端を芸能の世界で見せてくれるのは、能舞台の「橋掛」(はしがかり)だ。舞台で繰り広げられるのは死者の舞。異界に登るための通路が橋掛なのだ。
現代では形を変えて、例えば、格闘技などの選手が歩く道「ウォークアウト」がそれだろう。
「練習の日々=日常」から「必死の戦いの場=異界」にわたる橋だ。
海外の作家が書いた本にも異世界に旅する話はある。
「はてしない物語」では、
確かに、本は私たちを知らない世界に連れていってくれる。本を開く事は、異世界に踏み出すことなのだ。
ご存知「ハリーポッター」では、
キングクロス駅の9と3/4番線プラットフォームが、異世界への入り口で、ホグワーツ・エクスプレスに乗る。
「ホビット」ではビルボ・バギンズの家の前の扉。快適な家を出たところから、異界への旅は始まる
私たちには、毎日新しい世界が広がる。私たちはその世界を歩いている。
このことに気がつくと、目の前に広がる世界が全く違う世界に見えてくる。同じ通勤路を歩いていても、昨日と全く同じにはならない。
私たちの毎日は、家を出るところからが始まる異世界での冒険だ。入り口は家の玄関かもしれない。
さらに言えば、布団の中で目を開いたところから異世界は始まるのだ。
このことに気がつくと、私たちの目に飛び込んでくる一つ一つが別の意味を持ち始めるだろう。