今まで幾度となく台湾に足を運んでいるが、まさかこの国で自分の本が出版され、さらにその記念講演会が開かれるなど思ってもいなかったことだ。台北入りしてから、私の本を担当された出版社の編集者や翻訳者にもお会いしたが、どなたもお人柄がとても良く、嬉しく思った。講演会場に赴くと、想像以上に立派なホールで大勢のスタッフが準備万端で迎えてくれた。
通訳者も事前に私の考えをよく理解されていて、阿吽の呼吸で講演することが出来た。台湾の人たちは一般に現実的で快活だが、自分たちが文明史の中で置かれている立ち位置をしっかり自覚してほしいという思いで話をした。『異界探訪』が鏑矢となって、他の本も中国語に翻訳され、アジア人として共通の価値観が中国語圏で認識されることを願っている。もちろん、それは財運を最優先する漢民族の文化を超えたものでなくてはならない。
国境を越えて、世界各地に広く定着している中国語圏の人々の自覚次第で、これからの世界情勢が大きく変わるような気がしている。英語圏の人間が人類文明を主導する時代は幕を下ろしつつある。日本の初等教育でも将来を見据えて、英語と中国語を併修するようなカリキュラムに舵を切るべきだと思う。外国語能力を磨けば、おのずと母国語の表現力も豊かになるので、一石三鳥だ。



