ニリンソウ ー7 最終回 友梨は今どこに?
(つづき)48の秋🍂貴子はずっと友梨のことを気にしていた。子供を置いて家を出たことは、実家の母に聞いていた。ある日、一枚の絵葉書が届いた。友梨からである。山の麓に湖が広がっている写真だ。「喫茶店オープン」えー喫茶店オープン⁇友梨はどこにいるの?長野県立科町と記してある。友梨は両親との思い出の場所に来ていた。山の上の遊園地だ。昔の記憶を頼りにたより、やっとたどり着いた。こんな山の上だったっけ山の上にホテルがあり、すぐ近くに湖があった。そしてその周りに小さな遊園地があった。父と母の笑顔が嬉しくて、大はしゃぎした場所だ。父と手を繋ぎ歩いた道、母と笑い転げた広場。大声で叫んだジェットコースター。3人で乗ったボート。どんどん記憶が蘇ってくる。あー、あの頃は笑っていたんだ。父も母も笑っている。そして、「友梨ちゃん〜、友梨ちゃん〜」私を呼ぶ両親の声が聞こえてくる。あー、私は愛されていたのだ。そして、私も両親が大好きだった私が私である場所を見つけたよしここに決めたここで暮らすことにしよう!周辺の物件探しであちこち歩いていた時、山をもう少し下ったところにまた湖があることに気付いた。急いで車で下ったら気が付かなかったかもしれない。湖の辺りには別荘が立ち並び、大きなホテルが2、3軒立っていた。そして、湖を囲むようにやや低めの山があった。あー、なんて静かなんだろう。何かが秘そんでいそう。湖面には光が反射してキラキラ輝いていた。周りの山は紅葉していた。ゆっくり、ゆっくり、湖に近づき、大きく深呼吸した。友梨は手を合わせていた。すると、突然涙が溢れてきた。やがて嗚咽になり大きな声で叫んでいた。「あ〜、神様 。ありがとうございます。」湖の辺りを歩いていたらログハウスの洒落た喫茶店が目に入ってきた。「こんにちは〜、コーヒー下さい。」「あらっ! いらっしゃい。パパ、コーヒー一つ、淹れて下さい!ごめんなさいね。大きな声で。もう、パパさん耳が遠くなっちゃってね。」「ご夫婦でやられているんですか?」この老夫婦はもう30年前から、ここで喫茶店を営業して来たという。この女神湖に一目惚れしたそうだ。最初は別荘として使っていたが、50歳になった時、もう、ここで暮らそうということになり、喫茶店を隣接したそうだ。物件を探し回っている時、必ず立ち寄ってコーヒーを頂いて帰るようになった。ご夫婦とおしゃべりして帰るのも楽しみになっていた。そんなある日、私もこの女神湖周辺に家を探していることを伝えると、「良かったら、この店を譲り受けて貰えません?もう、年齢的にしんどくなって来てて、誰かに譲りたいね、と話していたの。そろそろ老人ホームに行こうかな?って。」「えっー」友梨は喜んで、この喫茶店を引き継ぐことにした。お店の改装は一部、大工さんにお願いしたが、なるべく自分でやれることはやった。床板の張り替えや塗り壁、棚板も作った。友梨にとっては大きな変化であった。積極的になる!ということは、子育て以外になかったことである。毎日が楽しかった。そして、オープンの目処がたったので、大切な愛する家族に案内の葉書を出すことにした。まず、息子の朔(サク)へ 君が生まれてくれただけでもどんなにありがたいか!本当にありがとう。そして、さらに私の生まれ変わりのきっかけを与えてくれてありがとう。本当にありがとう。お母さんは見つけましたよ。ぜひ会いに来てください。そして、親友の貴子へ 私が私のままでいることを最初からずっと受け入れてくれて、ありがとう。ずっと好きでした。私がなりたかった自分がわかったよ。ぜひ会いに来てください。そして、愛する父、母へ 私はずっと父と母が大好きだったということにやっと素直に思えるようになれました。ありがとう。私たち家族の幸せがあった場所で、私は生まれ変わります。ぜひ、見に来てください。友梨は確かなものをやっと見つけた。化粧も忘れ、丁シャツにジーパン、なりふり構わず動き回っている。そして、大きな声で、「いらっしゃいませー」終わり