多くの学校で、給食が実施されておりますが、その始まりは、明治22年、山形県鶴岡市の私立忠愛小学校だと言われています。
この「私立」という言葉、現代のようなイメージではありません。
明治5年に学制が発布されても、家庭が貧しく学校には入れない子が多く、山形では就学率が5割にも満たなかったため、こういった子どもたちにも教育を与えようと、鶴岡市の寺院が宗派を超え、大督寺の本堂の一部に学校を開設しました。
それが、この学校です。
しかし、お弁当を持ってこられない子どもも多く、お寺が無償で昼食を提供しました。
本格的な学校給食のスタートは、戦後、昭和22年、あの「脱脂粉乳」の時代です。
今の小学生のママ・パパは、もう「脱脂粉乳とコッペパン」の時代ではなく、米飯給食と箸も導入されてからの年代かと思います。
ただ、どうやって使っても、あまりお行儀のいい食べ方にはならない「先割れスプーン」。現代でも使われていますので、これを使用した経験はあるのではないかと思います。
食事に用いる道具として、日本は箸を使います。
給食では、前出のスプーンのようなものも使用致しますが、匙を常用しないのが日本食ですね。
これは、漆器の文化とも関連があります。
ご存じのように、漆器のことを「ジャパン」といいます。
温かい触感の漆器は、器に直接口をつけて汁を飲むという味わい方にふさわしい食器です。
だからこそ、スプーンを使用する必要はなく、手に持ちます。(西洋のスープ、韓国などの金属製の食器を使用した飲み物の飲み方などと、異なりますね。)
スプーンを使わないので、ご飯(米)を頂く時にこぼす恐れがあり、ご飯茶碗も手に持って、口までの距離を近づけ、持ち上げて食べるようになったんですね。
3年生の社会科の「昔の道具」の資料写真に、一人一人のお膳で食事をしている様子が出ていました。
食事が個人の膳で行われていたことなども、食器を手に持つ理由の一つです。
さて、箸の使い方ですが、正しい使い方は三種類。「はさむ」「ちぎる」「引き裂く」です。
ここに「刺す」は、ありません。
これは、攻撃性をあらわにする振る舞いとされています。
このように、食事の作法には、奥深い日本文化に根ざしたものがあるんですね。
食事の場の活動全体が、子どもの社会性を育てるきっかけ作りともなります。
共に食べる時間を過ごす人々との関係はどうするのか。そういったときの温かい言動はどのようなものなのか。(よくない話題を持ち出すと「食事がまずくなるからやめてくれ!」と言いますよね。)
だからこそ、子どもと一緒にとる食事は大切な教育なんですね。
以前、関連のお話をお伝えしたことがありますが、「孤食」をできるだけ避けたい理由の一つは、ここにあります。
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