【北京=河北彬光】中国江蘇省蘇州で24日午後、蘇州日本人学校から送迎中のスクールバスを待っていた日本人の母子が、中国人の男に刃物で切り付けられた。バス案内係の中国人女性を含む計3人が負傷した。母子は病院に運ばれたが、命に別条はない。事件を受け、同校は25日を休校としたほか、中国内の他の日本人学校も登下校時の警備を強化した。

◆バス案内係の中国人女性は重体

 警察によると、男は52歳の無職。別の都市から蘇州へ来たばかりだった。逮捕され取り調べを受けているが、動機は明らかになっていない。中国外務省の毛寧(もうねい)副報道局長は会見で「事件の発生は遺憾だ。警察は初期段階で偶発的な事件とみている」と述べ、計画的な犯行の可能性を否定した。

中国の国旗(資料写真)© 東京新聞 提供

 負傷した日本人は30代の母親と未就学の男児で、学校に通う子の帰りを待っていたところを襲われた。案内係の中国人女性は現場で男の犯行を止めようとして負傷し重体という。

 蘇州は上海市に隣接し、日本企業が多数進出。北京の在中国日本大使館は現地当局に安全確保を要請し、外交ルートを通じて情報共有と再発防止を求めた。

 北京日本人学校では25日朝から警備が強化された。子どもを通わせる30代の母親は「日本人を狙った事件かどうか分からないのが不安」と話した。

 中国では昨年8月の東京電力福島第1原発の処理水放出以降、日本大使館などへの嫌がらせの電話が相次ぎ、各地の日本人学校に石や卵が投げつけられた。今月10日には吉林省の公園で米国人ら5人が刺される事件も起きた。