川勝知事の後継争いで揺れる静岡県庁

川勝平太氏の後継者を決める静岡県知事選は、立憲民主党、国民民主党の推薦を受ける元衆院議員で浜松市長を4期務めた鈴木康友氏(66)と自民党推薦で元副知事の総務官僚だった大村慎一氏(60)は、両者がっぷりと四つに組む接戦となった。

新知事の座をどちらが手にするのか見通せない情勢は投開票日5月26日の前日まで続きそうだ。

 

静岡県知事選の選挙ポスター掲示板(筆者撮影)

静岡県知事選の選挙ポスター掲示板(筆者撮影)© 現代ビジネス

 

ここに来て、県庁職員の90%超が大村氏の応援に回ったといううわさが流れている。

90%超は大げさかもしれないが、多くの県庁職員が大村氏の新知事就任を期待しているのは事実である。

県庁幹部OBたちが選挙事務所に入り、元同僚だった大村氏の応援をしているが、いくら何でも、県庁幹部OBが現役職員に指示を出して、応援を求めているわけでないだろう。

 

一説によると、浜松市長時代の鈴木氏の豪腕ぶりのうわさが県庁内に流れ、それで、温厚でまじめな大村氏であれば、あまり厳しいことはないだろう、という理由のようだ。

見方を変えれば、大村氏ならば、ぬるま湯に浸かれるということになる。個々人に聞いているわけではないから、このうわさのファクトチェックは危ういが、真実性は限りなく高い。

 

ただ県庁職員の支援によって、どこまで大村氏に有利に働くのかは全く見えない。

5月13日に開催された県リニア地質構造・水資源専門部会を取材していて、県庁職員たちが大村氏寄りであることははっきりとわかった。

今回の会議では、これまでの言い掛かりを丸のみにして、JR東海の主張をそのまま認めた。森貴志副知事はじめリニア担当職員たちは、‟川勝色”をすべて一掃した上で、新たな知事を迎えたいようだ。

県専門部会はJR東海の主張を丸のみ

となると、「1年以内の解決を目指す」大村氏の主張と合致している。

大村氏はリニア問題について5つの約束を掲げた。「流域の声を反映させる」、「大井川の水と環境を守る」、「国の関与を明確にする」などとして、「責任を持って解決する。1年以内に結果を出す」と訴えている。

大村氏の背景を考えれば、「1年以内に結果を出す」という公約も理解できる。1日も早い静岡工区の着工を目指す自民党の推薦候補だからである。

 

リニア問題解決を強調する大村氏(筆者撮影)

リニア問題解決を強調する大村氏(筆者撮影)© 現代ビジネス

ただそんなに簡単に行くのかどうかはわからない。

 

丹羽俊介JR東海社長は16日の会見で、岐阜県瑞浪市のリニアトンネル工事の問題を取り上げた。

ことし2月頃からトンネル内に湧水が発生、現在も毎秒20リットルが出ている。その影響で地域のため池や井戸で水位の低下が確認され、JR東海はトンネル掘削工事を一時中断し、対応に当たるのだという。

 

静岡県の場合、リニアトンネル工事でJR東海は大井川の湧水が毎秒約2トン減少すると試算して、その対応策を発表した。

毎秒2トンは、瑞浪市の100倍にも当たる水量である。その影響について2018年夏から6年近くも協議してきた。

川勝氏の退場とともに、県専門部会はJR東海の主張を丸のみする方向である。しかし、今回の瑞浪市の問題を受けて、そんなに簡単に丸のみしてよいのか問われることになる。