岸田首相、「脱法パーティー」常習犯の可能性 “初入閣”“外相就任”などの「祝う会」として繰り返された事実上の資金集め

初入閣した15年以上前から疑わしい資金集めを…(時事通信フォト)

初入閣した15年以上前から疑わしい資金集めを…(時事通信フォト)© NEWSポストセブン 提供

 低迷する支持率回復のために岸田文雄・首相は「政治とカネ」をめぐる改革アピールに躍起になっている。その議論自体が迷走していることもさることながら、そもそもこの総理に政治改革を進める資格はない。自身が初入閣した15年以上前から、遵法精神を疑わせる資金集めを繰り返してきたからだ。その実態を総力取材で明らかにする。【前後編の後編。前編をから読む

【図解】「岸田方式」脱法パーティーの手法 「総理就任」と「外装就任」を祝う会の酷似したカラクリ

「岸田方式」の繰り返し

 本誌・週刊ポストは、岸田首相が任意団体を利用した“脱法パーティー”の「常習犯」であることを新たに掴んだ。

 岸田首相が第2次安倍内閣の外相に就任した半年後の2013年6月22日、リーガロイヤルホテル広島のロイヤルホールで「外務大臣就任を祝う会」が開かれた。会費は1万円。報道では確認できないものの、地元の広島市議の1人はこのパーティーの壇上で挨拶する岸田首相の写真をフェイスブックにアップしており、広島県熊野町のこの年の町長交際費報告書にも、「衆議院議員 岸田文雄先生 外務大臣就任を祝う会」の名目で1万円の支出が記載されている。会場も会費も2022年6月に開催された「総理就任を祝う会」と同じだ。

 

 外相就任を祝う会に関わった元岸田事務所関係者から具体的な証言を得ることができた。

「会場の収容人数は1000人規模ですが、およそ3000人に招待状を送りました。企業には10枚単位で送るし、欠席者が多いことも見込んでいましたから。会費1万円で収入は1000万円から1500万円くらいだったと思う。招待者の名簿づくりからお金の管理、受付まで全部岸田事務所でやりました。自民党支部、後援会ともに岸田事務所のなかにあって、秘書や元スタッフが応援に駆り出されました」

 実質、岸田事務所が運営を取り仕切った“政治資金パーティー”のように見えるが、岸田文雄後援会、岸田首相の資金管理団体「新政治経済研究会」、政党支部(自民党広島県第一選挙区支部)のどの政治資金収支報告書にも、この外相就任を祝う会の収支は記載されていなかった。

 祝う会の収益はどこにいったのか。

 その一端がうかがえるのは、岸田首相の政党支部の2013年分の政治資金収支報告書に、「衆議院議員岸田文雄先生外務大臣就任を祝う会」なる団体から、パーティー当日の6月22日付で382万6112円の寄附がなされていることだ。団体の代表者名には「岸田文雄後援会」の収支報告書上の代表を2012年まで務め、後援会の会長だったA氏の名前が記載されている。

 本誌の調べで、この「外務大臣就任を祝う会」なる団体は法人登記も政治団体としての届け出も出されていない任意団体であることがわかった。

 1000万円以上の収入を得たという証言があるにもかかわらず、収支報告書上の寄附は約382万円のみ。差額は何に消えたかわからない。「岸田方式」そのものだ。

 岸田首相の総理就任を祝う会(2022年)も企画・準備段階から運営まで岸田事務所が中心になって開催しながら、現後援会長が代表を務める「衆議院議員岸田文雄先生 内閣総理大臣就任を祝う会」なる任意団体が主催したことにして収益の一部である約322万円だけを政党支部に寄附させていた。

 結果、パーティーの収入総額や収支、購入者名、寄附額との差額を何に使ったかも政治資金収支報告書に記載されず、“闇の中”になった。しかも、現後援会長は本誌の取材に、「祝う会の代表になったことはないし、寄附した覚えもない」と証言。任意団体は岸田事務所がでっちあげた“ダミー団体”であり、代表者は名義だけ拝借し、政党支部への寄附まで岸田事務所の自作自演だった疑いが濃厚だ。

 

 本誌は改めて外相就任を祝う会の収益約382万円を寄附した主催団体の代表とされている元岸田後援会長A氏の自宅を訪ねたが、本人は亡くなっており、遺族は取材に応じなかった。

外相就任を祝う会でも全く同じ手法

 ただ、現地取材ではある重大な証言を得た。外相就任を祝う会に出席した広島の元地方議員が語る。

「政治資金パーティーの案内状などには、政治資金規正法22条の8に基づくパーティーであると記載しなければならないが、岸田さんの外相就任を祝う会の案内状にはそうした記載がなかった。

 おかしいなと思って案内状が届いた数日後、岸田事務所のB秘書に電話で『記載がないけど、どうやって会計処理するんですか』と確認したんです。そうしたらB秘書は事前に調べていたようで、『集まったお金から必要経費を差し引いて、残ったお金は寄附する』と即答しました。政治団体の主催にしないのであれば、政治資金収支報告書は出さなくていい。その後の総理大臣就任を祝う会も同じで、このやり方ならば、政治資金規正法を厳しくしても意味がない」

 この証言からは、岸田事務所が最初から政治資金集めを目的に外相就任を祝う会を開催しながら、案内状には「政治資金規正法に基づく政治資金パーティー」だという表示をしないで任意団体主催の形を取り、意図的に政治資金規正法逃れをしていたことがうかがえる。

 自民党裏金問題と首相の「祝う会」問題を検察に告発した上脇博之・神戸学院大学法学部教授が指摘する。

「岸田事務所の秘書が、外相就任を祝う会について開催前から『経費を差し引いて残ったお金を寄附する』と説明していたのであれば、この祝う会は岸田首相の政党支部や政治団体の政治資金パーティーとして収支を報告するのが筋です。

 岸田事務所はそれを百も承知で、案内状に『政治資金規正法22条の8に基づく政治資金パーティー』との告知をせず、“政治資金パーティーではない”と見せかけたのだと考えられる。最初から政治資金規正法の抜け道はないかと考え抜かなければ、こんな手口にはならない。事務所にこんなやり方を認めていたこと自体、岸田さんの総理や大臣としての資質が問われる」

 

「初入閣でも大々的にやった」

 そもそも、「岸田方式」の原点は、外相就任よりもっと前、第1次安倍改造内閣で内閣府特命大臣(沖縄・北方担当相)として初入閣(2007年8月)した時に遡る。

 前出の元岸田事務所関係者の証言だ。

「2007年の初入閣の祝う会のほうが大々的でした。初めての入閣祝いとあって事務所も勝手がわからず、警備はどうするか、ゲストは誰が迎えに行くかなど課題が多く、警察に相談しながら準備したことを覚えています」

 前出・広島の元地方議員はこう言う。

「会場はリーガロイヤルホテル広島で1000人以上は集まっていたと記憶しています」

 この初入閣を祝う会を岸田首相が政治資金収支報告書でどう処理していたかを調べると、2007年に岸田首相の政党支部に「衆議院議員岸田文雄先生内閣府特命担当大臣就任を祝う会」なる団体から240万円の寄附があり、同パーティーの収益の一部だったことが推察される。しかし、同支部や資金管理団体、岸田文雄後援会の政治資金収支報告書には開催した事実も収支も記載されていない。

 これに味をしめた岸田首相は“脱法パーティー”を繰り返してきたと考えられるのだ。だからこそ、政治資金規正法改正論議のなかで、「岸田方式」による抜け道を、規制が及ばない裏金づくりの“聖域”のまま守ろうとしているのではないか。

 岸田事務所に聞くと、こう文書回答した。

「外務大臣就任を祝う会は、平成25年に地元経済界有志の主催で行われました。したがって、祝う会の主催者が岸田文雄後援会であるとの貴誌のご指摘は事実に反します。なお、同会の詳細を弊事務所は把握しておりません。故B(回答では実名)元秘書はすでに他界しており、同人に確認することもできませんので、貴誌ご指摘の第三者との会話の有無を確認することもできません」

 内閣府特命担当大臣就任を祝う会については、「平成19年に地元の政財界の皆様に発起人となって開催していただきました。弊事務所は、同会の詳細を把握しておりませんので、ご質問に回答できる立場にありません」と答えた。

“脱法パーティー”と指摘されるような資金集めを常習的に繰り返していることへの見解を問うた質問には、回答をしなかった。

 自身の政治とカネをめぐる重大疑惑に正対しようとしない総理大臣に「再発防止」など無理な話で、それを指揮できるはずがない。

(了。前編を読む)

※週刊ポスト2024年5月31日号