ペダルが付き、モーターで走る「モペット」。公道では原付きバイクのルールを守る必要がありますが、自転車のように街を走り回る“違法モペット”が多く目撃されています。危険な運転を繰り返す集団がいるとの情報が寄せられ、調査報道班が追跡しました。

■スロットルを回すとタイヤが回る

“違法モペット”でデリバリーか……歩道乗り上げ、信号無視 危険な運転を追跡! 配達員は「自転車」と主張【#みんなのギモン】

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小野高弘・日本テレビ解説委員(調査報道班)

「今回注目したいのはペダル付き原付きバイク、『モペット』です。自転車のようにも見えますね。ペダルは付いていますが、バイクなので自分の力で走ります。ハンドル部分のスロットルを回すと、モーターでタイヤが回転します」

森圭介アナウンサー

「こいでないのに!」

小野解説委員

「公道を走るにはナンバープレートが必要です。乗る際には運転免許証やヘルメットも必要になります」

森アナウンサー

「完全にバイクですね」

小野解説委員

「このモペットをめぐり、危険な運転を繰り返す集団がいるとの情報が寄せられました。『外国籍の配達員たちが“違法なモペット”でフードデリバリーをしています。いつか重大な事故になることは間違いないです』というもので、取材を進めました」

■ペダルこがず…100メートル近く走行

 

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配達員たちは、民家で共同生活をしているといいます。情報をもとに、東京・豊島区の住宅街へ向かいました。自転車のような乗り物5台が、家の前にズラリ。外国人とみられる男性たちが、ここを出入りしていました。その行方を追いました。

向かった先は駅前のファストフード店。商品をピックアップして、店から出てきました。配達をしにいくようです。店の周辺でその様子を観察しました。下り坂でもないのに、100メートル近い距離をペダルをこがずに走っているように見えます。

■「電動アシスト自転車」との違い

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人がこぐのをモーターで補助する「電動アシスト自転車」に対して、モペットはフル電動。モーターの力だけで走ることができる、いわゆる「原付きバイク」です。

モペットで公道を走るためには、運転免許証の携帯やナンバープレートの表示、ヘルメットの着用、ウインカーなどの取り付けが法令で義務づけられています。

■ナンバープレートもヘルメットもなく

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配達員たちは手にバッテリーを持ち、乗り物には外付けのモーターが見えます。モーターとバッテリーが確認できた一方、彼らの乗り物がモペットか電動アシスト自転車なのかは、見た目では判断できません。

ただペダルをこいでないことから、この乗り物はモーターの力だけで走れるモペットのようです。一方でナンバープレートは付いておらず、ヘルメットも未着用。ルールが守られていない“違法なモペット”ではないのかという疑いが拭えません。

■住民撮影の映像には危険行為の数々が

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住民撮影の映像からはさらに、違法な運転も確認できました。進入禁止の標識を無視すると、そのまま一方通行の道を逆走。赤信号を無視して道路を渡ると、モペットが走ってはいけない歩道に乗り上げました。

車椅子の人や高齢者のすぐ横をスピードを緩めずに走ったり、子ども連れの人がいる歩道を走ったりと、危険な運転をしている場面もありました。

付近の住民は不安を抱えていました。撮影した人は「ものすごいスピードで走っています。しかも音が全くしない。急にものすごいスピードで出てくるんですよね」

■都内では昨夏に“違法モペット”の事故

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実際、“違法モペット”による事故は起きています。去年7月、東京・新宿区で撮影された映像があります。赤信号を無視した“違法モペット”が、道路を横断しようとしていた自転車の女性に衝突。女性はその場に転倒し、頭などに大けがをしました。

■直撃取材に配達員は…警視庁が調べ

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法令違反に、危険な運転。その認識はあるのか、配達員たちを直撃しました。

──この乗り物って何ですか?

配達員

「……」

通訳

「Do you speak English? What is this bike?(英語は話せますか? このバイクは何ですか?)」

問いかけには応じず、家の中へ入っていきました。すると、「ウズベキスタンから来た」と話す別の住人が、撮影しないことを条件に取材に応じました。

──何だと思って乗っている?

「自転車、自転車」

──これはモーターでは?

「モーターです。これが運転を手伝っています」

違法モペットではなく、電動アシスト自転車だとこの住人は主張しました。

──スピードがビュンと出る。危ないという認識は?

「いや、ないです」

──危ないと思っていない?

「思っていない。まだ」

自転車だとして街を走り回る配達員たち。取材に対して、危険だという認識はないと答えました。警視庁は現在、この配達員たちの乗る車両が違法である可能性もあるとして調べを進めています。

■見た目での判断難しく…取り締まりは?

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鈴江奈々アナウンサー

「こうした違法なモペットの取り締まりは難しいのでしょうか?」

小野解説委員

「警視庁などの方に聞いたところ、モペットなのか自転車なのか、見た目で確実に判断するのは難しいといいます。そのため声をかけて止まってもらって、車輪が自動で回転するのか、アクセルにあたるスロットルが付いているのかなどをチェックする必要があります」

森アナウンサー

「かなり取り締まりに手間がかかるわけですね」

小野解説委員

「問題は、本当は原付きバイクなのに自転車のように乗り回している人が多いということです」

「私たちが街で取材した映像では、横断歩道で歩行者と一緒になってモペットが渡っています。人が大勢歩いている繁華街の歩道で、人の間を縫うように走行しています。そして赤信号を無視して突っ込んで行っています」

鈴江アナウンサー

「結構スピードも出るでしょうし、重厚感のある乗り物なので、ぶつかった時危ないですよね」

■ネット販売では「自転車」表記も

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森アナウンサー

「(モペットだと)分かって見ていても、自転車と区別がつかないですよね」

小野解説委員

「こうなっているのには理由があります。違法と分かってやっている人もいるんですが、原付きバイクと知らずに乗り回している人もいるんです。その理由は、販売方法にも問題があるためです」

「インターネットで買おうとすると、『アクセル付きフル電動自転車』などと紹介されていることが多いんですよ」

鈴江アナウンサー

「『自転車』と書かれているから、自転車が売られているのかなと思います」

小野解説委員

「確かに、よくある電動アシスト自転車かと思っちゃいますよね。さらに問題なのは注意書きです。『公道を走るには運転免許証が必要』『ナンバープレートが必要』『ウインカーなども取り付けが必要』といったとても大事なことが、小さく書かれています」

 

「ここに目がいかずに、パッと見て自転車だと思って買って乗り回す人がいるということなんです」

森アナウンサー

「これはあえて気付かせないようにしている風にも感じます。こうなってしまうとユーザー任せになって、かなり限界があるなと思います。対策はどんなことが必要ですか?」

小野解説委員

「モペットの安心安全な普及を目指す業界団体に聞きました。ナンバープレートの登録や自賠責保険への加入を確認してからでないと販売できないようにする、それがベストな方法だと話しています」

(5月3日「QUESTION!#みんなのギモン」より)