耐震基準の地域格差を見直しへ…リスク低いとされた能登は現行では東京の10%引きの強

 

読売新聞オンライン

 国土交通省が、建築物の耐震強度に地域ごとで差をつけている制度の見直しを検討していることがわかった。能登半島地震や熊本地震など、半世紀近く続く現行の基準で必要な強度を割り引くことが認められている地域で大規模地震が相次いだことを受け、基準を全国一律とすることも視野に入れている。

 

 耐震基準は、震度6強~7程度の地震でも倒壊しない強度を原則とするが、構造計算が必要な鉄筋コンクリートの建築物と3階建て以上の木造建築物では地域差を設定。地域ごとにリスクを評価し、耐震強度に「地震地域係数」を掛け合わせることが建築基準法で定められ、係数が国交省の告示で規定されている。

 東京都や大阪府などはリスクが大きいとして係数は「1・0」だが、新潟、広島県などは「0・9」、福岡、長崎県などは「0・8」とされ、構造計算時にそれぞれ強度を1割、2割下げることができ、一般的に建築コストが低くなる。

 現行の係数は1980年に規定された。2016年の熊本地震、18年の北海道胆振(いぶり)東部地震で震度7が観測された地域はいずれも「0・9」だったが、被害は2階建て以下の木造住宅が主で、係数は大きく影響しなかったとみなされ、見直しには至らなかった。

 しかし、最大震度7を観測した1月の能登半島地震が発生したエリアも係数は「0・9」で、国交省は本格検討にかじを切ることにした。

 有識者による委員会が、石川県内の鉄筋コンクリートの建築物の被害調査を進めて耐震強度と被害の関係などを分析し、今秋をめどに方向性を示す方針。「1・0」に統一する場合、国交省の告示を改正した上で、改正後に建てられる建築物に適用する。改正前の建築物については「不適格」扱いはせず、その後の補強などは求めない考えだ。

 国交省幹部は「耐震強度に地域差があることが、防災意識を醸成する妨げになりかねない」としている。

 ◆地震地域係数=過去の記録を基に、発生頻度や被害の程度などに応じて、国が1・0~0・7の範囲で定め、構造計算時に掛け合わせる。1952年に国が各地域の係数を告示し、80年に1度改定された。