支持率が一向に回復しない岸田政権に、党内の不満は高まるばかり。ついに菅前総理が「打倒岸田」を掲げて動き出した。政敵に負けることは避けたい総理は、自身の進退について、ある決断を下す―。

怯える岸田が大激怒

〈兵法勝負の道においては、何事も先手先手と心懸くることなり〉(『五輪書』・風之巻より)

岸田文雄総理の座右の書が吉川英治の『宮本武蔵』であることはあまり知られていない。「何が武蔵だ。二刀流どころか刀折れ矢尽きた状態じゃないか」と呆れる人もいるだろう。しかし岸田総理はいま、武蔵が最も重視していた兵法の一つ「先手を打つ」を実践し、己に立ち向かってくる政敵を片っ端から迎え討たんとしている。

「森山さんが昨夜菅さんに会って、『岸田政権は持たないかもしれない。次はもう一度、あなたが総理をやってはどうか』と話したそうです」

現職総理自ら政治倫理審査会に出席するという「憲政史上初の奇策」に打って出る直前の2月27日。岸田のもとに側近からこんな極秘情報が届けられた。「森山さん」とは、森山裕自民党総務会長、「菅さん」はいうまでもなく菅義偉前総理のことを指す。

 

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前夜に六本木のステーキ店で森山と菅、そして二階俊博らが会食した際、一向に上がらない政権支持率に危機感を募らせた森山が菅に「もう一度、総理をやる気はないのか」と尋ねたというのだ。

重鎮政治家同士の会食の席だ。これぐらいの会話は普通に交わされるだろう。しかし、いつ誰に寝首をかかれるかと不安で仕方ない岸田は、これを聞いて烈火のごとく怒ったという。

「一丸となって危機を乗り越えなければならないときに、そんな話をするとはどういうことだ!」

もう誰も信用できない

森山は岸田が信頼を置く数少ない議員の一人だ。政治とカネの問題で自民党が機能不全を起こすなか、右に左に奔走し、岸田政権を維持しようと尽力してきた党の要。特に、旧安倍派の重鎮5人が政倫審への出席を求められたとき、総理がこれに出席しないで済むように野党に働きかけていたのが森山だった。

その森山が、あろうことか我が宿敵である菅にすり寄ろうとしている。岸田はそう受け止めた。

「森山さんも信頼できないな……」

そう判断した岸田は、2月28日の朝、誰に相談することもなく突然党幹部らに電話を掛け、「私が自分で政倫審に出ます」と宣言した。

総理自ら政倫審に出席した結果、年度内に予算を成立させることに成功したものの、党内からは「汗をかいて奔走した森山さんに黙って一人で決めて、恥をかかせた。総理は非情だ」と非難する声が上がった。しかし、岸田の捉え方は逆だ。

 

「森山さんが菅さんにすり寄ったなんて話が表に出たら、俺が恥をかく。その前に、俺が先に恥をかかせてやったんだ」

我が身に危険が及ぶなら、先手を打って潰していく。さんざん世話になった森山にさえこの仕打ちなのだから、いわんや政敵に対してはなおさらである。次にその刃が向けられるのは「岸田後」を見据えて動き出した菅前総理に対して、だ。

政倫審を乗り越えたものの、政権支持率は一向に上がる気配がない。その水面下ではいったい何が起きているのか。

つづく後編記事『「俺が中心になって退陣を促し、進次郎を担ぐ」…!菅前総理が「キングメーカー」の座を巡って岸田&麻生と争う「最終決戦」の行方』では、その実態に詳しく迫ります。

「週刊現代」202431623日合併号より