【岸田おろしに向けて地方議員らが口火】命運が決まるのは4.28衆院統一補選「3戦全敗なら間違いなく岸田おろし、1勝2敗でも起きる」

自民党の地方議員たちも岸田文雄・首相に…(写真/共同通信社)

自民党の地方議員たちも岸田文雄・首相に…(写真/共同通信社)© NEWSポストセブン 提供

 裏金問題をめぐってリーダーシップを発揮できず、支持率は超低空飛行の岸田文雄・首相。もはや党内で言うことを聞く者もいなくなりつつある。そんな危機的状況に追い詰められた岸田首相は、ひそかに党内の反対派粛清の「武器」を握ろうと動き出した。

 

 3月17日開催の自民党大会で岸田首相は「派閥を二度と復活させない」という運動方針案を採択する方針だが、同時に、裏金問題を起こした議員を処分できる党則改正の準備を進めている。この党則改正で、党内の反対勢力に圧力をかけようとしているのだ。

 

菅義偉・前首相ら岸田首相の敵対勢力が結集

 だが、党則改正は逆に岸田政権の寿命を縮めかねない。

 自民党内からは、「党則改正をするなら、事務局長が略式起訴された岸田派の会長だった首相自身も処分の対象にならなければ筋が通らない」(二階派幹部)という反発があがっているからだ。

 3月1日には、岸田首相の政敵である菅義偉・前首相が安倍派の萩生田光一・前政調会長、茂木派の加藤勝信・前厚労相、二階派の武田良太・元総務相、無派閥の小泉進次郎・元環境相と会食した。自民党職員を長く務めた政治評論家・田村重信氏はこう指摘する。

「岸田首相の(党則改正の)動きに対抗し、敵対勢力が動き始めた」

 党大会を前に決戦ムードが高まる中、首相の責任追及の口火を切ったのは地方議員たちだった。

 2月17日の自民党大分県連大会では、地元議員から「野党に下るきっかけになりかねない」と裏金問題への対応に批判が集中。来賓の小渕優子・選対委員長は「2009年の野党転落を思い返す。自民党の危機と言える」と謝罪に追われた。

 自民党大分市議が語る。

「私は野党に転落した時の自民党時代も経験しているので、余計に危機感が強い。岸田さんにそれを跳ね返すだけの力があるとは思えない」

 別の大分市議は、「来年には市議選がある。このままでは落選だ」と怒りを口にした。

 事実、自民党は地方選で大苦戦中だ。「保守王国」と呼ばれる群馬県の前橋市長選(2月4日)では自民党推薦の現職が野党系新人にまさかの大敗を喫した。裏金批判で保守票が逃げたためだ。

 横山勝彦・前橋市議(自民党系)はこう言う。

「このまま岸田さんが総理の座にいると、この後の衆院補選と地方選挙にも影響してしまう。岸田さんが二階さんや安倍派の幹部に国会の場できちんと説明させることができないのであれば示しがつかない。私は首相の地元の広島の自民党地方議員とも話をしたが、総選挙になれば岸田さん自身の選挙もかなり厳しいものになると言っていた」

 こうした状況は森喜朗内閣の末期とそっくりだ。

 相次ぐ失言と失政、2000年の「加藤の乱」などの内紛で支持率がどん底の1桁台まで落ち込んだ森首相は、2001年3月の党大会前、全国の地方議員から「早期退陣」を求める声が噴出し、森おろしが激化して4月に退陣表明に追い込まれた。

 

 岸田首相も党大会で地方組織からの退陣要求が火を噴けば、党則改正どころではなくなる可能性がある。

 田村氏は、岸田政権の命運が最終的に決まるのは党大会後の4月28日の衆院統一補欠選挙(東京15区、島根1区、長崎3区)だと見る。

「3戦全敗なら間違いなく岸田おろし。1勝2敗でも起きるでしょう」

 補選準備に奔走する長崎3区が地元の自民党佐世保市議がこう語った。

「谷川さん(弥一・前衆院議員、政治資金規正法違反容疑で略式起訴)がやらかして議員辞職し、まだ誰を立てるのかすら決まっていないが、補選に岸田さんが応援に来たら間違いなく逆風になる。負けるから来ないでほしい」

 自民党の地方組織はすでに岸田首相に“三行半”を突きつけている。

※週刊ポスト2024年3月22日号