例えばサージカルテープの様な軽い刺激でも、十分に痛みを変えてくれることがわかった。

 

 

マウスを使ったの実験でマイクロコーンというわずか数十ミクロンの微細な突起を皮膚に10分間のせておくと、痛みの抑制が始まり、はずした後も30分間続くことが確認されている。これは微細な皮膚刺激により脳内に内因性のモルヒネ様物質が分泌されたと考えられる。


その裏付けとして、モルヒネ様物質の受容体を遮断するナロキソンという薬剤を投与すると痛みが抑制されなくなる。皮膚の微細な刺激でも痛みが軽減されることがわかった。ちなみに、このモルヒネ様物質は、エンドルフィンと呼ばれエンドは内側、モルフィンはモルヒネ、それらの言葉を合成したものである。

 

ランニングの時に起こるランナーズハイと言われる現象も同じ脳内物質の働きによるものだと言われている。さっきまで苦しかったものが、急に楽になってかえって気持ちいい感じにる。このエンドルフィンは、私達を様々な苦痛から解放してくれる物質なのだ。『大往生したけりゃ医療とかかわるな』の著者

 

医師の中村仁一先生は、人が自然に死ぬ時にはモルヒネ様物質が出て苦しむことはない。と言われている。洪水に巻き込まれたり、高いところから落ちたり、酸素が不足したり、身体が危険な状態になると脳内でエンドルフィンが出る。死とはすべての生命に必ず訪れるもので、あらかじめ

 

命の仕組みの中に組み込まれている、通常のプロセスの一つに過ぎないということなのだ。私自身の体験を話すと、子どものころよく熱性けいれんを起こした。身体は痙攣して苦しそうに見えていたようだが、意識は全然苦しくなかった。今でもその時の不思議と心地よい安心した感じをはっきりと覚えている。


さらに、2017年オックスフォード大学出版局『ペインメディスン』に、肩関節周囲炎への円皮鍼による即時鎮痛効果のランダム化二重盲検比較試験が掲載され、本人も気付かない様な皮膚への極わずかな刺激が、鎮痛を起こすことが報告された。


実際の臨床においても、皮膚の上に何かが貼り付けられるような、例えばサージカルテープの様な軽い刺激でも、十分に痛みを変えてくれることがわかった。興味深いことに、蚊に刺され痒みもテープを貼ると軽くなる。ただしセロテープはかぶれるのでおすすめできない。


風の子セミナー『皮膚で聞くボイスヒーリング・子どもの皮膚を通して見た世界』より修正加筆