井戸のように気が湧き出るツボを揉むこと


体を動かせない人にとって、爪を揉む、という行為をしてあげるだけでも、まるで起き上がって運動をしたような効果があることがあります。東洋医学では、爪の生え際を井穴(せいけつ)といって、井戸の井の文字をあてて呼んでいます。文字通り、井戸のように経絡を流れる気が湧き出すツボ、という意味です。

手足の指先は、先端に向かって動脈と静脈がつながり、Uターンして戻っていくとても重要な部位だと言うことができます。この血流がUターンしていく特性を、うまく利用したものが、始めに言った、爪を揉む、ということなのです。爪を揉むことで、それはまるで、ポンプをこぐように血液を送り出すことができる、ことに古代の医師たちは気がついたのでしょう。その様子を見て、井戸から水をくみ上げるようだ、と思ったのかも知れません。

さて、そうした井穴ですが、何かの理由で体が動かせなかったり、また体自体にコリがたくさんあり、血流が悪くなっている人には、この爪を揉む行為が、本当に大きな変化をもたらしてくれる可能性があります。ある看護師さんから、床ずれ、の話をされたとき、この手足の爪を揉む話をしたことがあります。実際のところ、傷ついた部分の変化だけでなく、全身の状態も良くなったようだ、ということでした。

また、医学的にとても厳しい状態だと相談を受けた何人かの人に、爪を揉む、行為を辛抱強く続けていただいたところ、目を見張るような結果を得たことも、一度や二度ではありません。こうした変化をもとに考えれば、体には、心臓という全自動ポンプと、もう一つ(正確には10個)末端部分に手動ポンプが備え付けてある、ということになります。

誰でも知っている血圧は、心臓が血液を押し出す力ですが、これが上昇してしてしまうのは、ポンプが圧をかけないと、血液を送り届けることができない、ということになりますね。そうこうしているうちに、全自動ポンプはフル稼働を続け、ポンプ自体が壊れかかってしまうことになるのかも知れません。そこで考えれられることは二つ、一つは、体を軟らかくして血液が流れやすくすること、もう一つは、ポンプを肩代わりして、負担を軽くしてやることでしょうか。

確かに治療をしてコリを取り除いていくと、血圧、心臓共に、だいぶ負担が軽くなる様子がうかがわれます。それと同時に、手足に備え付けられている、手動ポンプを使ってみると、これまた、大きな助けになると思われます。これの何が良いって、手動ですから、機械も電気代も何もなく、いつでもどこでもできる、という点です。

とても簡単なことで、大きな助けになるものですから、やってみて損はないかと思います。ただ、今回ここで紹介しているものは、いずれも、爪を揉む、これだけをやっているわけではありません。病院では医師の管理の下、家族ができることとして、手足を揉んであげているということですし、心臓に関しても同様です。そこは、大きな助け、の一環としてやっていただければと思います。