私自身、中高の運動部の主将や地域選抜になる様な体をしていたのだけれど、ずっと自律神経の症状を抱えていた。起立性調節障害がありよく倒れることがあった。病院の診察券をいくつも持って治療を受けていたが結果的に症状を改善できずに、最終的に自分で治すしかないと鍼灸の道に進んだ。
自分にできることは、とにかく迷走神経反射によって起こるこの自律神経の不調和をどうしたら抑えることができるのか、自分の体で試すしかなかった。結果、耳介鍼と練灸で症状をほぼ抑えることができるようになったが、同時に症状を全て抑えてはいけないということも身をもって体験した。それは危険。
また私は基本的に治療の説明を極力しないようにしてきた。言葉のわからない子どもや動物に使えないような治療、つまり説明をする事によるプラセボを除きたかったからで、評判は悪いが仕方ない。とにかく事実として症状を止めるにはどうすればよいのか知りたかった。その意味で愛犬の存在は大きかった。
先天的に腸の疾患を持っていたパール、高齢の犬種に特有の脳疾患と坐骨神経痛を抱えていたマロン。どの様な鍼が効き、また効かないのかハッキリと教えてくれた。更に本来の鍼と灸がどれほど高い効果があるのか、脳疾患で真っ直ぐ歩けないものが、一つの耳鍼で真っ直ぐ歩ける様になるのは感動的だった。
若い時一見体が強そうなのに実は自律神経不調で、サボっているように見られたりして、体育教師から手酷い体罰を受けていた自分が不憫になる。その実験の過程では入院などの危険もあったが、五十年生きて来てようやく鍼灸漢方を使って自分の体を調整できるようになり、長かった治療の道を振り返ってみた。