山髙龍雲 風に吹かれて
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新しき日々

出会いがあるから生きていることは楽しい


人であれものであれ言葉であれ


出会いはまた新しい出会いを生んでくれます


仏師を志して五十五年


なんともたくさんの材と出会えました


初心の頃には 紅松 檜 楠の御三家


現在は木曽檜を筆頭に 楠 榧 白檀 欅 一位 


翌檜 榀 桐 杉 松 公孫樹 槙 榎 槐


まだ忘れている名があるかもしれません


屋久杉との不思議な出会いと


特筆すべき出来事は何度もブログに登場しました


中でも


大阪の小山先生のご依頼でご縁を持てた屋久杉は


その大きさといい 木質や木目や光沢 どれをとっても


いま探そうしてもとても無理なほど良い材で


屋久島から工房に届いてより2年ほどの間に


相次いで数体の仏さまがお生まれになられました


その中の一体 十一面観音様は遥々海を越えて


ラスベガス郊外の観音寺様のご本尊にお納まられ


前後して


箕面の金峰山寺教会にお納めしたのは蔵王権現様


もう二十年も以前のことになります


こちらは護摩を焚かれるので当然舞い上がった護摩の


炎の煤を


お身体に纏われることになります


数年ごとにお伺いすると


屋久杉の光沢と護摩の煤の光沢が


なんとも神々しく時の流れを変えておられました


けれど


卒寿を越えられた山田先生からお電話をいただき


最近ご入院されたこともあり


二十年を越える護摩行の一区切りの行事として


後進の方々に誇りを持って残せる蔵王権現様の


「御身拭い」を とのご依頼を


製作者の私にお声をかけてくださいました


護摩を焚かれ続けられた二十年間の膨大なお話は

 

そのどの一話を取っても興味深いものであって


それはそのまま


二十年前に彫像させていた時の私のひと鑿ひと鑿に


繋がっていきます


こちらは完成当時のお姿







さて 「お身拭い」の当日


工房全員で厳重に手袋マスク着用の上


祭壇から蔵王権現様を抱き下ろし


護摩行の度にお身体にお受け止めになられた


二十年の煤を新しい刷毛の先で丁寧に祓っていくと


これまた


煤の下から屋久杉の木目が凛とした輝きを放って現れました


思わず漏らした息でマスクの中が熱くなって


しばらく手を止めて


二十年前の山高龍雲の鑿のあとや


何箇所も訪ねた屋久島の材木置き場の雨の日を


思い返していました













齢を経ることで増してゆく力と輝き


「生きている限りが幸せな修行ですな」


山田先生の言葉が


いまも耳に残っています


















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